ブラジルの民族楽器ビリンバウ(Berimbau)

 私はイパネマスの曲を聞くたびに、不思議な金属的な音、言葉で表現するとビョンビョンとしか形容しようのない奇妙な音を出す楽器が何なのか判らなかった。ずっと、スチールドラム、スチールパンのような楽器かと思っていたのだが、この不思議な楽器の音に集中して聴いてみると、どうもそれらの楽器とは違うらしい。

 そして、今日調べていたら判りました。この奇妙な音は、ブラジルの民族楽器ビリンバウ(Berimbau)のものです。

 これは、イパネマスのウィルソン・ダス・ネヴィス(Wilson das Neves)がビリンバウを演奏している動画です。ずっと不思議だったのですが、インターネットで検索していたら判りました。いやあ、インターネットって、素晴らしいですね。そして、動画の力って本当に素晴らしい。百聞は一見に如かず。動画で確認しなければ、こんなことは調べる方法が思いつかない。もし、インターネットなしで、イパネマスのアルバムに入っているこの不思議な音色がどんな楽器によるものか調べようと思っても、おそらく調べることはできなかったに違いない。

 これで、Os Ipanemas、The Ipanemasの楽曲を聴くときの愉しみがひとつ増えました。

 しかし、不思議な楽器ですなあ。そしてウィルソンは素晴らしいミュージシャンですな。

Eddie Palmieri / Vamonos Pa’l Monte

評価 :5/5。

1971年作品

Music

  1. Revolt/La Libertad Logico
  2. Caminando
  3. Vamonos Pa’l Monte
  4. Viejo Socarrón
  5. Yo No Se
  6. Comparsa De Los Locos
  7. Viejo Socarrón (Take 9)(Bonus Track)
  8. VP Blues(Bonus Track)
  9. Mixed Marriage(Bonus Track)
  10. Moon Crater 1 (Lyndsay’s Raiders)(Bonus Track)

Musicians

  • Eddie Palmieri Band Leader
  • Ismael Quintana Vocal
  • Bob Vianco Guitar
  • Jose Rodriguez Trombone
  • Alfredo Armentereos Trumpet
  • Ronnie Cuber Baritone Saxophone
  • Nick Marrero timbales Bongo
  • Eladio Perez Conga
  • Arturo Franquiz Claves, Chorus
  • Monchito Munoz Bombo

Spetial invited guest

  • Charlie Palmieri Organ (solo)
  • Victor Paz Trumpet (Revolt/La Libertad Logico)
  • Charles Camilleri Trumpet (Caminando)
  • Pere Yellin Tenor Saxophone (intro Yo No Se)

Chorus

Santos Colon, Justo Betancourt, Marcelino Guerra, Yayo El Indio, Elliot Ramero, Mario Munoz

 このアルバムのCDは二枚持っている。最初に購入したのはボーナストラックの収録されていないもの、そして二度目に購入したのがボーナストラックの収録されているリマスター盤である。ボーナストラックのうちVP Blues、Mixed Marriage、Moon Crater 1 (Lyndsay’s Raiders)はここでしか聞けないもので、私はこの三曲が聴きたいためにリマスター盤を購入したのであった。

 エディー・バルミエリ(Eddie Palmieri)は、50年を超えるその長いキャリアのなかで、さまざまな演奏スタイルを採用してきた。ジャズに近い曲、オーソドックスなラテン音楽、そして打楽器が強力にフィーチャーされた曲。彼はハード・ラテンというスタイルを作り出した人物であるとされているが、一貫して変らないのは、彼の演奏する音楽がいつもラテン音楽だということである。

 そして、その巨匠(マエストロ)Eddie Palmieriの代表作の一枚がこのアルバムなのである。もしもこの巨匠を知らなかったとしたら、このアルバムを聴いてみると良いだろう。

 最初の「Revolt/La Libertad Logico」から、リズムの洪水に飲み込まれる。ブラスが強力に吹き鳴らされ、カウベルとボンゴ、コンガの音が心地よい。まさにハードである。スペイン語の歌詞は全く解らないのだが、革命という題名から想像すると、物騒な内容のようである。La Libertad Logicoは直訳すると論理の自由という意味だから、思想の自由ということだろうか。

 アルバム・タイトル曲の「Vamonos Pa’l Monte」では、いつものピアノだけではなく、オルガン(ハモンド・オルガンか)を聴くことができる。この曲もノリのよい曲だ。表題の意味は「山へ行こう」。都会は雑踏だが、山へ行けば清々しい気分になるぜ、と歌われていると勝手に思っている。ここでオルガン・ソロを弾いているのはエディーの兄、チャーリー・パルミエリ(Charlie Palmieri)。兄弟でも、紡ぎ出される旋律はエディーのものと明確に異なることが判るだろう。

 「Comparsa De Los Locos」は最近のライブでも良く演奏される曲。表題は「狂気の外観」という意味。どういう意味? 確かにぶっ飛んだ曲です。ある意味凄い。Blue Note Tokyoで観たコンサートでもこの曲が演奏されていたと記憶している。

 しかし、エディー・パルミエリの楽団(EDDIE PALMIERI SALSA ORCHESTRAの名で登壇していた)の技術は素晴らしい。一発録りでアルバムが作れてしまうのではないかと思うほど完璧な演奏を聴かせてくれるのである。

 エディーの演奏をもう一度生で聴くことができるだろうか。いや、是非にももう一度聴きたいと思っている。

Miles Davis / Kind of Blue

評価 :5/5。

1959年作品

Music

  1. So What
  2. Freddie Freeloader
  3. Blue In Green
  4. All Blues
  5. Flamenco Sketches

Personnel

  • Miles Davis – trumpet
  • Julian “Cannonball” Adderley – alto saxophone (on1,2,4,5)
  • John Coltrane – tenor saxophone
  • Bill Evans – piano (on1,3,4,5,)
  • Wynton Kelly – piano (on 2)
  • Paul Chambers – double bass
  • Jimmy Cobb – drums

 私は休日に寸暇を得て音楽を聴きたい気分になったとき、このアルバムを選ぶことが多い。

 2千枚を超える所蔵のアルバムをすべて聴くには、毎日違うアルバムを聴いても6年間はかかる。だから、週末ごとに同じアルバムばかり聴いている余裕はないはずなのに、CDを一枚聴くだけの時間しかないような時になると、このアルバムを聴きたくなることが多い。

 コントラバスの深い響き、ピアノの煌めくような音色、寸分の乱れも感じさせないドラムスの紡ぎ出すリズム。そしてそれらの上で繰り広げられるマイルス・デイビスの控え目に演奏されるトランペットの調べと、それに比較すれば元気に吹き鳴らされるサクソフォン。

 言葉にするのは難しいのだが、私にとって完璧な時間がこのアルバムに封じ込められているようなのだ。どんなときもこのアルバムは私を裏切らない。聴いている途中で、今の時間をもっと価値あるものにするアルバムが別にあるのではないか(ほかのアルバムに浮気したくなるということです)と思うようなこともほとんどない。そう、このアルバムには完璧な時が封じ込められているのだ、私にとっては。

 発売当初の5曲についていえば、アルバムを通して素晴らしく水準の高い曲だけが収められていて、ハズレの曲がない。今のように、何度も録りなおして上手く演奏できた部分をつなぎ合わせていくようなことはまだできなかった時代である。最高のコンディションのメンバーが集まり、途轍もない緊張感をもって演奏が繰り広げられたのではないか。今に生きる一人の音楽愛好家として、そんなことを夢想したりする。

 このアルバムは、いまさら私が紹介するまでもない名盤中の名盤で、ジャズのおすすめランキングなどの企画があれば必ず上位に選ばれるものだ。ジャズの枠を超えて、全てのアルバムの中でも十指に入るのではないか。誰にでも絶対の自信をもってすすめられる逸品なのである。

 好事家の間では、このアルバムでモード・ジャズが始まったということのようだが、一人の音楽愛好家に過ぎない私にはその理屈はうまく理解できない。コードよりも旋律を重視した奏法と勝手に解釈しているが、どうだろうか。現代音楽が、調性を超越して旋律の前後のつながりだけに帰結するように(これも自分勝手な解釈です)。

The Ipanemas / Afro Bossa

評価 :5/5。

2003年作品

Music

  1. Suspeita
  2. Sertão
  3. Sereno
  4. Espraiado
  5. Música Profissional
  6. Chorinho B
  7. Bambuí
  8. Bosco
  9. Aqui Dá Tudo Certo
  10. Seu Dario
  11. São Pedro da Aldeia
  12. Afro

 まず最初に言っておこう。このアルバムは素晴らしいので、是非にも聴いてみてもらいたい。ワールド・ミュージックを聴く人なら、必ず聴くべきアルバムである。以上終り。それだけで良い。

 が、それでは紹介にならないので、このアルバムについて少しく記してみることにしたい。

 表題がアフロ・ボッサとなっているが、いわゆるボサノバを期待して購入すると期待外れになるだろう。このアルバムを聴くと、ラテンの要素もボサノバの要素も感じるけれども、どれとも違う彼ら独自の音楽に昇華していると言ってよいだろう。

 イパネマスはウィルソン・ダス・ネヴィス(Wilson das Neves)とネコ(Neco)のグループ。ウィルソンはパーカッショニスト。ネコはギタリストだ。

 Wikipediaの記述によると、ウィルソン・ダス・ネヴィスは重要なスタジオ・ミュージシャンでサラ・ヴォーン、トゥーツ・シールマンス、エリス・レジーナと共演しているようだ。Wikipediaには、もっとたくさんのミュージシャンと共演したと書かれているが、ここでは私が知っているミュージシャンだけをピックアップしたのである。いやはや、こんな大物と共演しているのなら、彼の実力は折り紙付きというものだ。

 ネコのことは良く判らないのだが、同様に素晴らしいスタジオ・ミュージシャンだと勝手に思っている。

 彼らは、Os Ipanemasの名で1964年に最初のアルバムを出し、残念ながらその後は活動を停止してしまった。二枚目のアルバム「The Return of the Ipanemas」を発売したのが2001年。そして、私の最高に気に入っているこの「Afro Bossa」を発売したのが2003年である。この活動休止期間の間は、二人とも先に挙げた大御所達のためにプレイしていたのだろう。

 長すぎる活動休止期間が惜しまれるところである。

 あのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ( Buena Vista Social Club)のアルバムと映画の発売、公開が1990年代の最後の数年だから、イパネマスの活動再開も彼ら老ミュージシャンたちの活躍に触発されてのことだったのかも知れない。

 スタジオ・ミュージシャンとして、それだけのキャリアを重ねた彼らが録音したアルバムだから、特定のジャンルに収まらないのも無理はない。

 再結成後というべきか活動再開後というべきかは分からないのだが、イパネマスは2001年以来数枚のアルバムを発表しているのだが、私はこのアルバムが最も好みである。中でも、打楽器の面白みを最高に楽しめる最後の曲「Afro」が秀逸である。キューバの音楽を聴いていると、アフリカ土着の音楽そのものに聞える楽曲に触れることがある。この曲はそれらともまた違うアプローチなのだが、しかししっかりとアフロになっている。より洗練されていると言うべきだろうか。ブラジルの民族楽器ビリンバウの響きが楽しめる「Espraiado」も素晴らしい。独特の疾走感のある曲調だ。

 その他の曲もどれも高い水準の曲ばかりで、流して聴くとあっという間にアルバムを聴き終えてしまう。凄いアルバムである。

 この記事を書くためにAmazonで調べていたら、このグループの最初の作品「Os Ipanemas」が販売されているのを見つけて購入してしまった。最近、Amazon Music Unlimitedで音楽を聴くことが多くなってCDを買う枚数が激減したのだが、最近また増え始めている。このウェブ・ページを書き始めたからかな。

菅波ひろみ / 10YEARS

評価 :4/5。

2014年作品

Music

  1. Set Me Free
  2. You’re My Perfect Lover
  3. もう一度だけ
  4. 再生の灯火に -We’re Standing All Over Again
  5. Dreaming Child
  6. SING OUT!
  7. I Just Wanna Feel Alright!
  8. 汐騒の慕情
  9. MUSIK IS…
  10. Life Is Journey
  11. 季節はめぐって

 菅波ひろみを聴くようになったきっかけは、Fukushima Recordsでその歌声に触れたことであった。Fukushima Recordsは、東北の震災後に福島県内の企業と有志のミュージシャンが集まって作ったプロジェクトで(正しく説明すると少し違うかもしれないが、私の理解はこの程度である)、難波弘之の演奏が聴けることが購入の決め手だった。

 このプロジェクトから出ている5枚のアルバムのうち、「声に出して。」と「Vanilla」に菅波ひろみの曲が含まれていて、このシリーズのアルバムを何度も聴くうちに、ソウルフルな歌をうたうこの歌手をきちんと聴いてみたくなり、Amazon Musicで探してこのアルバムを聴くようになった。そして、私はそこに収録されている楽曲の魅力にとりつかれた。このアルバムを何度も繰り返し聴いた。彼女の良いところは、日本語で歌うところ。ロックも、フラメンコも日本語で歌うとまるで違う音楽ジャンルのようになってしまうことが多いのだが、菅波に限ってはそんなことはない。きちんとソウルミュージックになっている。魂の音楽だ。

 調べてみると、彼女は福島県いわき市の出身で、自身も被災しているらしい。音楽活動のかたわら、歌の指導をしているようだ。このアルバムには、震災を歌った曲「再生の灯火に -We’re Standing All Over Again」が含まれるが、被災した経験が、彼女の歌に深みを与えているのは間違いないだろう。

 菅波ひろみは素晴らしいシンガーだ。アップテンポの曲もバラードも高い歌唱力で歌いきって、危ういところは微塵もない。彼女の歌う曲は、アメリカのソウルミュージックの影響を色濃く感じさせるものが多いが、ソウルミュージックの単なる模倣ではなく、日本人ならではの何かが含まれているように感じる。楽器を演奏しているメンバーも水準が高く、アルバムをとおして安定した演奏を聴かせてくれる。コーラスも秀逸だ。

 演奏メンバーは次のとおり。

  • Keyboard :中道勝彦
  • Guitar :荻原亮
  • Bass&Band master、 Co-producer:江口弘史
  • Drums:白根佳尚

 1曲目の「Set Me Free」はエレキベースの印象的なリフレインから始まる乗りの良い曲だ。この曲を聴いただけでアルバム全体への期待が高まるだろう。菅波は日本語と英語とで歌っており、歌詞がわかるというのも本場のソウルミュージックにはない利点である。

 2曲目の「You’re My Perfect Lover」と5曲目の「Dreaming Child」では、荻原亮のギターが聴ける。これだけのミュージシャンを集めることができたのも、菅波の実力と言えるだろう。5曲目はスライドギターだ。こちらも味があってよい。「Dreaming Child」はファンキーで乗れる曲だ。

 3曲目の「もう一度だけ」は、しっかりしたミュージシャンの演奏にささえられたしっとりとしたバラードだ。「すり減った靴の底で、さみしさが音を立てる・・・・・・。」歌詞もしみじみ良いと思う。歌の間に入るキーボードのソロも私好みで、印象的だ。

 4曲目の「再生の灯火に -We’re Standing All Over Again」は哀しく美しい震災の曲だ。この歌詞は被災した人の思い謳ったものとして、現代日本に住む誰にも素直に受け入れられるものであろう。この曲もキーボードが秀逸だ。

 6曲目の「SING OUT!」は、タメの感じられるベースの旋律が印象的な、ファンクよりの曲だ。カッティングギターと、切れの良いドラムスも良い。悲しんでばかりはいられない。ファンキーだ。

 このアルバムの最後を飾る「季節はめぐって」は、抒情的なバラードだ。あからさまに歌詞には表れないが、季節の移り変りと美しい自然とを謳うこの曲にも、震災の影が指しているように感じてしまう。ルイ・アームストロングの「この素晴らしい世界(What A Wonderful World)」の歌詞に逆説的なものを感じるように。この曲のエフェクターをかけないギターの調べも良い。生のピアノ(に聞える音源)を使用しているのも良い。この曲で静かにこのアルバムは終る。

The Ipanemas / Afro Bossa

評価 :5/5。

2003年作品

 このCDを初めて聴いたとき少し驚いた。他の音楽と比較するのがむずかしい、独特な、ジャンル分けの難しい、しかし爽やかで寛げる優しい音楽がスピーカーから流れ出したからである。アルバム・タイトルから「ボサ・ノバ」か、と思えばそうではない。リズムは「ラテン音楽」に近いが、メロディーが違う。このCDではまさに「アフロ・ボッサ」としか表現のできない独自の音楽世界が創り上げられているのである。現在の私はそう結論付けてゐる。

 このCDは全体的に水準が高いのだが、特に12曲目が凄い。打楽器の音の洪水。アフリカ風の歌声。スチールパンの音。全てが混沌として混り合い、まさに「アフロ」というべき楽曲に仕上がっているのである。

 休日の午後にコーヒーを飲みながら、庭でも眺めつつ聴きたい、そんな作品である。

 このCDは現在は新品が流通していないようなので紹介するのをためらったのだが、やはり、純粋に自分が好きな音楽を紹介したいと思うので今回はこれを掲載することにした。ザ・イパネマズのCDは他にも入手しやすいものがある。どれもよい出来だと思うので、入手しやすいものから試してみることも良いと思う。

(註)これは平成20年に発表した文章に一部手を入れたものです

Roberto Fonseca / No Limit : Afro Cuban Jazz

評価 :4.5/5。

2001年作品

 ロベルト・フォンセカはキューバ生まれのピアニスト。あのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのコンサートのツアーメンバーとしても有名。このCDは彼の日本盤初登場作品である。
 肝腎の音楽のほうはどうかというと、ラテン音楽よりもジャズに近いアプローチだと思う。エディー・パルミエリが(パルミエリはプエルトリコ系だが)ラテン音楽からジャズの方向へ近付いていったこととは対照的に、ロベルトの音楽の原点はジャズにあるのではないか。そして、そのジャズに自分の周りにあるラテン音楽のスパイスを加えたら、彼のラテンジャズになつたのではないだろうか。

 「KOWO KOWO」は表題の注釈にあるとおり、濃厚なアフリカの匂いがする楽曲である。エディー・パルミエリにしてもアフロ・キューバン・オールスターズにしても、このロベルト・フォンセカにしても時々アフリカ起源の土俗的な楽曲を出してくるのだが、それだけこの地域への黒人奴隷の移入が大量であったために「アフロ・キューバン」と呼ばれる音楽の混血現象が発生したのであろう。

 「DE QUE VALE」でロベルト・フォンセカは少々実験的とも言える方法を試している。叙情的な女性の歌声に、河の流れるようなゆったりとした旋律がかぶさる曲調が一転してクラブミュージック風に変って行く。私はクラブミュージックというものは疎くてあまりよく知らないのだが、この曲は面白いと思う。

 普通のジャズに飽きた人、ラテン音楽が好きな人にお勧めしたい一枚である。

(註)これは平成20年公開の文章に一部手を入れたものです。

Gipsy Kings / Luna De Fuego

評価 :4/5。

1983年作品

 Gipsy Kings のメジャー・デビュー前の作品が、きのう紹介したAllegria とこの Luna De Fuegoである。

 この2枚は、ギターと歌(カンテ)と手拍子(パルマ)だけとうふ、非常に素朴な編成で演奏されており、メジャーになった後よりも純粋な形でジプシー・キングスの音楽が楽しめる。

 Allegriaほどの名曲揃いではないが、手元に置いておきたい一枚である。

Gipsy Kings / Allegria

評価 :4.5/5。

1982年作品

 このアルバムと「Luna de Fuego」は、ジプシー・キングスの世界デビュー前の作品だ。そのため、後のCDに同じ曲が異なる録音で採録(再録?)されていたりする。
 しかし、だからと言って、このアルバムに価値が無いわけではない。いや、むしろ逆である。メジャー・デビュー後のサウンドように、ドラムや電子楽器の肉付けは無い。聴いた感じでは、一発録りで作られたような録音で、曲の間が掛け声でつながっていたりするけれど、それだけに彼らの土臭い情感が生で伝わってくる。
 サウンドは素朴で、かき鳴らすギターとパルマ(手拍子)と独特の節回しのカンテ(唄)、そしてトニーノ・バリアルド奏でるギターの旋律。これだけで出来上がっている。これらが渾然一体となって、御機嫌な音楽空間を創り上げているのだ。

 そして、なにより曲が良い。Pena Penita、Allegria、Djobi, Djoba、Un Amor、Pharaonと、名曲が目白押しだ。

 私が、UK版のCDを特に薦めるのは、国内盤「ジョビ・ジョバ」や米国盤「Allegria」では、「Allegria」と「Luna de Fuego」を一枚に編集しているため、当然一枚のCDには全ての曲が収まりきらないために、「Requerda」や「Pharaon」などの曲がカットされてしまっているからだ。ジプシーキングスの本当のファースト・アルバムが完全な形で聴けるのが、英国盤なのである。

 また、後にChico & the Gpysiesを結成するChico Bouchikhiが在籍していることも特筆すべきだろう。

 このアルバムはジプシー・キングスの原点なのである。

(註)この文章は2005年にアマゾンのレビューに投稿した私の文章に一部手を入れたものです。

Gipsy Kings / Roots

評価 :4.5/5。

2004年作品

 このアルバムは「ルーツ」と銘打っただけあって、メジャーデビュー前の作品を彷彿とさせる、ジプシー・キングスの原点に立ち返ったかのような作品だ。最小限の打楽器とコントラバス以外は、ジプシー・キングスのギターと歌とを思い切り堪能できる作品に仕上っている。

 二曲のFandangoは私の耳には完全なフラメンコに聞える。ギター一本とカンテ(歌)だけの素朴な作品なのだが、私はこのアルバムの中ではこの二曲が最も気に入っている。やはり彼らのルーツにはフラメンコと共通する部分が多いということなのだろう。フラメンコはスペイン南部アンダルシア地方に辿りついたジプシーたちの音楽が「ルーツ」なのだから。

 4曲目のBoleriasと13曲目のSoledadも秀逸だ。

 私はUK版のDVD付CDを手に入れたのだが、どうせ買うのならばこちらをおすすめする。このDVDは「ジプシー・キングスが田舎の別荘で演奏してゐる風景」とでもいう状況が採録されているのだが、これだけでも十分見る価値のある優れた作品だ。DVDはPAL方式のためテレビでは見ることができないようだが、私のパソコンでは何の問題もなく再生できた。

(註1)この文章は平成20年の文章に一部手を入れたものです。
(註2)DVD付きのCDは現在では入手が困難になっているようです。