The Ipanemas / Afro Bossa

評価 :5/5。

2003年作品

 このCDを初めて聴いたとき少し驚いた。他の音楽と比較するのがむずかしい、独特な、ジャンル分けの難しい、しかし爽やかで寛げる優しい音楽がスピーカーから流れ出したからである。アルバム・タイトルから「ボサ・ノバ」か、と思えばそうではない。リズムは「ラテン音楽」に近いが、メロディーが違う。このCDではまさに「アフロ・ボッサ」としか表現のできない独自の音楽世界が創り上げられているのである。現在の私はそう結論付けてゐる。

 このCDは全体的に水準が高いのだが、特に12曲目が凄い。打楽器の音の洪水。アフリカ風の歌声。スチールパンの音。全てが混沌として混り合い、まさに「アフロ」というべき楽曲に仕上がっているのである。

 休日の午後にコーヒーを飲みながら、庭でも眺めつつ聴きたい、そんな作品である。

 このCDは現在は新品が流通していないようなので紹介するのをためらったのだが、やはり、純粋に自分が好きな音楽を紹介したいと思うので今回はこれを掲載することにした。ザ・イパネマズのCDは他にも入手しやすいものがある。どれもよい出来だと思うので、入手しやすいものから試してみることも良いと思う。

(註)これは平成20年に発表した文章に一部手を入れたものです

Roberto Fonseca / No Limit : Afro Cuban Jazz

評価 :4.5/5。

2001年作品

 ロベルト・フォンセカはキューバ生まれのピアニスト。あのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのコンサートのツアーメンバーとしても有名。このCDは彼の日本盤初登場作品である。
 肝腎の音楽のほうはどうかというと、ラテン音楽よりもジャズに近いアプローチだと思う。エディー・パルミエリが(パルミエリはプエルトリコ系だが)ラテン音楽からジャズの方向へ近付いていったこととは対照的に、ロベルトの音楽の原点はジャズにあるのではないか。そして、そのジャズに自分の周りにあるラテン音楽のスパイスを加えたら、彼のラテンジャズになつたのではないだろうか。

 「KOWO KOWO」は表題の注釈にあるとおり、濃厚なアフリカの匂いがする楽曲である。エディー・パルミエリにしてもアフロ・キューバン・オールスターズにしても、このロベルト・フォンセカにしても時々アフリカ起源の土俗的な楽曲を出してくるのだが、それだけこの地域への黒人奴隷の移入が大量であったために「アフロ・キューバン」と呼ばれる音楽の混血現象が発生したのであろう。

 「DE QUE VALE」でロベルト・フォンセカは少々実験的とも言える方法を試している。叙情的な女性の歌声に、河の流れるようなゆったりとした旋律がかぶさる曲調が一転してクラブミュージック風に変って行く。私はクラブミュージックというものは疎くてあまりよく知らないのだが、この曲は面白いと思う。

 普通のジャズに飽きた人、ラテン音楽が好きな人にお勧めしたい一枚である。

(註)これは平成20年公開の文章に一部手を入れたものです。