Eddie Henderson / Shuffle and Deal

評価 :4.5/5。

2020年作品

 これはAmazon Music Unlimitedで見付けたアルバム。Amazon Musicを開いて、ホーム画面のおすすめを何の気なしに聴いてみたら気に入ってしまい、最近はこのアルバムを毎日のように聴いている。そして、ULTRA HDということで、CDよりも高音質で聴くことができるのも気に入っている。

 私は、子供の頃から音楽なしでは過せないほどの音楽好きでだったのだが、ジャズを聴き始めたのが遅く、さらには好きなミュージシャンばかり集中的に聴く性格なので、エディー・ヘンダーソンはこれまで聴いたことがなかったのである。私はハード・ロック好きのギター少年だったのである。エディー・ヘンダーソンは1940年の生まれで、ハービー・ハンコックのグループで演奏していたこともあるようだから、いろいろなジャズをやりつくした人のようだ。一時期ハービー・ハンコックばかり聴いていた時期があるから、そうとは知らずに彼の演奏を聴いたことがあるはずである。

 このアルバムのサウンドは典型的なジャズと言ってよいだろう。非常に洗練されていて、リラックスして聴ける。リズミカルな曲もしっとりとした曲もあって、いつの間にかアルバム最後まで聴いてしまうほどだ。このアルバムでピアノを弾いているケニー・バロンは昔から多数の一流音楽家と共演してきた強者(つわもの)で、このアルバムで聴けるピアノは超一流。このピアノとトランペットとの組合せが私の好みである。

Music

  1. Shuffle and Deal (Eddie Henderson)
  2. Flight Path (Kenny Barron)
  3. Over the Rainbow (Harold Arlen / Yip Harburg)
  4. By Any Means (Cava Menzies)
  5. Cook’s Bay (Kenny Barron)
  6. It Might as Well Be Spring (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II)
  7. Boom (Natsuko Henderson)
  8. God Bless the Child (Billie Holiday & Arthur Herzog Jr.)
  9. Burnin’ (Donald Harrison)
  10. Smile (Charlie Chaplin)

 アルバムリーダーはエディー・ヘンダーソンだが、ケニー・バロンの曲が2曲、ドナルド・ハリソンの曲が1曲含まれていて、選曲のバランスも良いと思う。私は、3曲目のOver the Rainbowや8曲目のGod Bless the Childのようなゆっくりしたテンポの曲が好きだ。ここで聴ける、ケニー・バロンのピアノはとても繊細で美しい。

Musicians

  • Eddie Henderson (Trumpet)
  • Donald Harrison (Alto Saxophone)
  • Kenny Barron (Piano)
  • Gerald Cannon (Bass)
  • Mike Clark (Drums)

Note

Recorded live on December 5, 2019 at Sear Sound Studio C, New York, NY.

 上の表現を見て最初は、いわゆるライブ・レコーディングなのかと思ったのだが、どうも違うようだ。観客を入れてのレコーディングという意味ではなく、スタジオでの一発収録ということなのだろう。Sear Sound Studioというのは、調べてみれば判るが、観客など入る余地のない、単なるスタジオなのである。

 つまり、このNoteの意味はスタジオでの一発録音を言っているのだろう。考えてみれば、それはジャズのアルバムでは珍しいことではない。ジャズという音楽は、再現することのできない演奏(アドリブ)を集めて出来上がっているのだから。

Miles Davis / Kind of Blue

評価 :5/5。

1959年作品

Music

  1. So What
  2. Freddie Freeloader
  3. Blue In Green
  4. All Blues
  5. Flamenco Sketches

Personnel

  • Miles Davis – trumpet
  • Julian “Cannonball” Adderley – alto saxophone (on1,2,4,5)
  • John Coltrane – tenor saxophone
  • Bill Evans – piano (on1,3,4,5,)
  • Wynton Kelly – piano (on 2)
  • Paul Chambers – double bass
  • Jimmy Cobb – drums

 私は休日に寸暇を得て音楽を聴きたい気分になったとき、このアルバムを選ぶことが多い。

 2千枚を超える所蔵のアルバムをすべて聴くには、毎日違うアルバムを聴いても6年間はかかる。だから、週末ごとに同じアルバムばかり聴いている余裕はないはずなのに、CDを一枚聴くだけの時間しかないような時になると、このアルバムを聴きたくなることが多い。

 コントラバスの深い響き、ピアノの煌めくような音色、寸分の乱れも感じさせないドラムスの紡ぎ出すリズム。そしてそれらの上で繰り広げられるマイルス・デイビスの控え目に演奏されるトランペットの調べと、それに比較すれば元気に吹き鳴らされるサクソフォン。

 言葉にするのは難しいのだが、私にとって完璧な時間がこのアルバムに封じ込められているようなのだ。どんなときもこのアルバムは私を裏切らない。聴いている途中で、今の時間をもっと価値あるものにするアルバムが別にあるのではないか(ほかのアルバムに浮気したくなるということです)と思うようなこともほとんどない。そう、このアルバムには完璧な時が封じ込められているのだ、私にとっては。

 発売当初の5曲についていえば、アルバムを通して素晴らしく水準の高い曲だけが収められていて、ハズレの曲がない。今のように、何度も録りなおして上手く演奏できた部分をつなぎ合わせていくようなことはまだできなかった時代である。最高のコンディションのメンバーが集まり、途轍もない緊張感をもって演奏が繰り広げられたのではないか。今に生きる一人の音楽愛好家として、そんなことを夢想したりする。

 このアルバムは、いまさら私が紹介するまでもない名盤中の名盤で、ジャズのおすすめランキングなどの企画があれば必ず上位に選ばれるものだ。ジャズの枠を超えて、全てのアルバムの中でも十指に入るのではないか。誰にでも絶対の自信をもってすすめられる逸品なのである。

 好事家の間では、このアルバムでモード・ジャズが始まったということのようだが、一人の音楽愛好家に過ぎない私にはその理屈はうまく理解できない。コードよりも旋律を重視した奏法と勝手に解釈しているが、どうだろうか。現代音楽が、調性を超越して旋律の前後のつながりだけに帰結するように(これも自分勝手な解釈です)。

Roberto Fonseca / No Limit : Afro Cuban Jazz

評価 :4.5/5。

2001年作品

 ロベルト・フォンセカはキューバ生まれのピアニスト。あのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのコンサートのツアーメンバーとしても有名。このCDは彼の日本盤初登場作品である。
 肝腎の音楽のほうはどうかというと、ラテン音楽よりもジャズに近いアプローチだと思う。エディー・パルミエリが(パルミエリはプエルトリコ系だが)ラテン音楽からジャズの方向へ近付いていったこととは対照的に、ロベルトの音楽の原点はジャズにあるのではないか。そして、そのジャズに自分の周りにあるラテン音楽のスパイスを加えたら、彼のラテンジャズになつたのではないだろうか。

 「KOWO KOWO」は表題の注釈にあるとおり、濃厚なアフリカの匂いがする楽曲である。エディー・パルミエリにしてもアフロ・キューバン・オールスターズにしても、このロベルト・フォンセカにしても時々アフリカ起源の土俗的な楽曲を出してくるのだが、それだけこの地域への黒人奴隷の移入が大量であったために「アフロ・キューバン」と呼ばれる音楽の混血現象が発生したのであろう。

 「DE QUE VALE」でロベルト・フォンセカは少々実験的とも言える方法を試している。叙情的な女性の歌声に、河の流れるようなゆったりとした旋律がかぶさる曲調が一転してクラブミュージック風に変って行く。私はクラブミュージックというものは疎くてあまりよく知らないのだが、この曲は面白いと思う。

 普通のジャズに飽きた人、ラテン音楽が好きな人にお勧めしたい一枚である。

(註)これは平成20年公開の文章に一部手を入れたものです。

Nuyorican Soul

評価 :3.5/5。

1997年作品

 このアルバムは10年以上前の作品だが古臭さは感じさせない。

 一応ラテン・ジャズに分類してみたが、巷ではテクノとかハウスとかにジャンル分けするらしい。私はインコグニートをAcid Jazzに分類しているのだが、そのインコグニート(Incognito)のサウンドとも共通するところがある。あるいは、このアルバムをワールド・ミュージックに分類してもよいだろう。もしかしたら、今や音楽をジャンル分けすること自体が無意味なのかもしれないが、しかし音楽ジャンルが好みの音楽に辿りつくための道標であることも事実である。

 閑話休題。

 エディー・パルミエリとインディアとが参加している。
 ニューヨリカン(Nuyorican)とはニューヨーク生まれのプエルトリコ人のことだが、まさに御大パルミエリはニューヨリカンだ。

 インディアの歌うRunawayが秀逸。下方にYouTubeへのリンクを貼っておいたので是非聴いてみてください。
 Taita CañemeとHabriendo el Dominanteはエディー・パルミエリのピアノが楽しめる作品。

 アルバムは全体がサウンドとして非常に洗練されていて、恰好いいサウンドに仕上がっている。

 古いアルバムだが、お薦めしておきます。

Eddie Palmieri / Listen Here !

評価 :4.5/5。

2005年作品

 御大、エディー・パルミエリ(Eddie Palmieri)の作品。彼は昨年(2009年)ブルー・ノート・東京出演のため来日したので御存じの向きもあるかもしれない。
 ラテン音楽を期待して購入したが、ジャズ色が強すぎてあまり好きになれなかった作品だが、最近聴きなおしてみると、ラテンのリズムは少々マイルドだが、きちんとラテンジャズになっていて、なかなかよろしい。エディー・パルミエリ音楽生活50周年記念アルバム。

理屈抜きに楽しもう。