1959年作品
Music
- So What
- Freddie Freeloader
- Blue In Green
- All Blues
- Flamenco Sketches
Personnel
- Miles Davis – trumpet
- Julian “Cannonball” Adderley – alto saxophone (on1,2,4,5)
- John Coltrane – tenor saxophone
- Bill Evans – piano (on1,3,4,5,)
- Wynton Kelly – piano (on 2)
- Paul Chambers – double bass
- Jimmy Cobb – drums
私は休日に寸暇を得て音楽を聴きたい気分になったとき、このアルバムを選ぶことが多い。
2千枚を超える所蔵のアルバムをすべて聴くには、毎日違うアルバムを聴いても6年間はかかる。だから、週末ごとに同じアルバムばかり聴いている余裕はないはずなのに、CDを一枚聴くだけの時間しかないような時になると、このアルバムを聴きたくなることが多い。
コントラバスの深い響き、ピアノの煌めくような音色、寸分の乱れも感じさせないドラムスの紡ぎ出すリズム。そしてそれらの上で繰り広げられるマイルス・デイビスの控え目に演奏されるトランペットの調べと、それに比較すれば元気に吹き鳴らされるサクソフォン。
言葉にするのは難しいのだが、私にとって完璧な時間がこのアルバムに封じ込められているようなのだ。どんなときもこのアルバムは私を裏切らない。聴いている途中で、今の時間をもっと価値あるものにするアルバムが別にあるのではないか(ほかのアルバムに浮気したくなるということです)と思うようなこともほとんどない。そう、このアルバムには完璧な時が封じ込められているのだ、私にとっては。
発売当初の5曲についていえば、アルバムを通して素晴らしく水準の高い曲だけが収められていて、ハズレの曲がない。今のように、何度も録りなおして上手く演奏できた部分をつなぎ合わせていくようなことはまだできなかった時代である。最高のコンディションのメンバーが集まり、途轍もない緊張感をもって演奏が繰り広げられたのではないか。今に生きる一人の音楽愛好家として、そんなことを夢想したりする。
このアルバムは、いまさら私が紹介するまでもない名盤中の名盤で、ジャズのおすすめランキングなどの企画があれば必ず上位に選ばれるものだ。ジャズの枠を超えて、全てのアルバムの中でも十指に入るのではないか。誰にでも絶対の自信をもってすすめられる逸品なのである。
好事家の間では、このアルバムでモード・ジャズが始まったということのようだが、一人の音楽愛好家に過ぎない私にはその理屈はうまく理解できない。コードよりも旋律を重視した奏法と勝手に解釈しているが、どうだろうか。現代音楽が、調性を超越して旋律の前後のつながりだけに帰結するように(これも自分勝手な解釈です)。