1981年作品
三十年前のアルバムだが、今なお新品を購入することができるのは名盤の証(あかし)だろう。キーボードの名手にして作曲家、プログレの貴公子、難波弘之の二枚目のアルバムである。が、最初のアルバム「Sense of Wonder」はジャズあり、ハード・ロックあり、プログレッシブ・ロックありといった具合で、音楽の方向性が見えてこないアルバムだった。
それに対して本作は、全体にプログレの軸が一本通っている。特に、そうる透と田辺モットの参加する「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」は圧巻だ。この二人は、難波弘之とSense of Wonderを結成して、「飛行船の上のシンセサイザー弾き」でも、その冴えた演奏を聴くことができる。
Music
- Overture
- パーマー・エルドリッチの三つの聖痕
- Eyes
- Hands
- Teeth
- 夢中楼閣
- パーティ・トゥナイト(地球を遠く離れて)
- ロスト・ラブ(雨の宇宙空港)
- 渇きの海
- シルバーグレイの街
Musicians
- All Keyboards & Vocals – 難波弘之
- Chorus 椎名和夫、難波弘之(2)、山下達郎、鈴木宏子、和田夏代子、吉田美奈子(7)
- Percussion – マック清水(4)、山下達郎 (3, 4, 7)、浜口茂外也 (7)
- Drums – そうる透 (2)、青山純 (3, 4, 6, 7)
- Bass – 田辺モット (2)、伊藤広規 (3, 4, 6, 7)
- Guitar – 北島健二 (3, 6)、椎名和夫 (4, 7)
「夢中楼閣」と「渇きの海」とは難波弘之のアルバムでしか聞けないサウンド。特に渇きの海は面白い構成で、私は結構好きだ。北島健二の無きのギターがすばらしい。
3、4、7の三曲はポップな曲だが、このアルバムの調和を乱すことはない。難波弘之は小説家でもあって、どの曲もその歌詞の中にSFという別の軸が通っていることが、その調和をもたらしているのかも知れない。
惜しむらくは、難波弘之の歌唱力がやや物足りないこと。物凄いテクニックで弾きまくるキーボードと比較すると、歌は別人に任せた方が良かったのではないかと思う。しかし、これは難波弘之のリーダー・アルバムなのである。そう考えると、彼の歌にも一応の及第点を付けることは可能である。
天は二物を与えず、ということか。それを差し引いても、素晴らしい傑作だと思う。
おすすめしたい。