Paco de Lucía / Siroco

 ジョン・マクラフリン、アル・ディ・メオラとのライブ・アルバムFriday Night in San Francisco – Liveを聴けば分かるが、パコ・デ・ルシア(Paco De Lucía)は、天才的なフラメンコ・ギタリストでありながら、「フラメンコ」の枠にとらわれない音楽活動で知られている。特に一時期Jazzに傾倒した。

 その多彩な活動を通して、スペイン南部アンダルシア地方の民俗音楽に過ぎなかった伝統的フラメンコ音楽を、現代に通用する音楽に変革し、世界に紹介したのもパコ・デ・ルシアであると言っても過言ではない。その意味でパコの活躍がなければビセンテ・アミーゴ(Vicente Amigo)も今のような形で聴くことはなかっただろうし、日本に沖仁が現れることもなかっただろう。

 シロッコ(Siroco)とは、地中海沿岸に吹く高温の南風のこと。1987年発表のこの作品は、そんなパコ・デ・ルシアの多彩な作品の中で、非常にフラメンコ色の強い作品に仕上がっている。「フラメンコ」が聴きたかった私は、このCDを初めて聴いたとき、「これだよ、これ」と思ったものである。

 ギターとパルマ(手拍子)で始まる一曲目のLa Cañadaは疾走感溢れる作品。パコ・デ・ルシアのギターが存分に楽しめる二曲目のMi Niño Curroはギター一本で演奏される抒情的な作品。以降、全曲「フラメンコ・ギター」が存分に楽しめる作品である。

 パコの唯一の欠点は作品をだすのが遅いこと。

 最新作はCositas Buenas。2004年の作品だ。

 そろそろ次の作品が出るのではないか、と思うのだが。