Afro-Cuban All Stars / A Toda Cuba le Gusta

評価 :5/5。

1997年作品

 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(Buena Vista Social Club)の先駆けとなった記念すべきアルバム。アフロ・キューバン・オールスターズ(Afro-Cuban All Stars)とブエナ・ビスタ・ソシアルクラブとの関係はやや複雑である。

が、その前にミュージシャンを紹介しておこう。

  • Lead Vocals: Ibrahím Ferrer, Pío Leyva, Manuel ‘Puntillita’ Licea, Raúl Planas, José Antonio ‘Maceo’ Rodríguez, Felix Valoy
  • Tres and leader: Juan de Marcos González
  • Piano: Ruben González
  • Bass: Orlando ‘Cachaito’ López
  • Trumpets: Luis Alemañy, Masnuel ‘Guajiro’ Mirabal, Daniel Ramos
  • Trombones: Carlos ‘El Afrokán’ Alvarez, Demetrio Muñiz
  • Baritone Sax and flute: Javier Zaiba
  • Pertcussion: Miguel ‘Anga’ (congas), Julienne Oviedo (timbales), Carlos González (bongos), Alberto Virgilio Valdés (maracas), Carlos Puisseaux (güiro)
  • Chorus vocals: Alberto Virgilio Valdés,Luis Barzaga, Juan de Marcos González
  • Special guests:Ry Cooder (Slide Guitar ‘Alto Songo’), Richard Egües (flute ‘Habana del Este’), Barbarito Torres (laoud ‘amor Verdadero’)

 このリストを見れば、ブエナ・ビスタとの共通性は明らかであろう。はじめ、ライ・クーダーがキューバのベテラン・ミュージシャンとアルバムを作成する予定であったが、そのキューバ側のまとめ役がファン・デ・マルコスであった。そして合流する予定だったアフリカのミュージシャンのビザが下りなかったために、ファン・デ・マルコスが中心となって先んじて作成されたのがこのアルバムだったのである。そのため、ライ・クーダーもスライド・ギターでアルバムに参加している。

 「Afro-Cuban All Stars」というバンドは、実際にはファン・デ・マルコスが当時すでに引退していたベテラン・ミュージシャンを口説いて寄せ集めたグループなのである。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブとミュージシャンが共通しているのはそんな経緯によるものだ。世界的に有名となったのはブエナ・ビスタの方だが、このアルバムも素晴らしい魅力に満ちている。

 曲ごとにヴォーカリストが異なっていたりするのは、そのためだろう。参加してもらった古老ともいうべきベテラン・ヴォーカリストのそれぞれに花を持たせる必要があったのではないだろうか。ファン・デ・マルコス・ゴンサーレスがこのグループのリーダーで、ほとんどの曲は彼がアレンジしている。このメンバーの中では若手といえる彼が、このアルバムの立役者であったことは間違いない。彼こそがこのアルバムのキーマンなのであった。

 このアルバムを通してルベーン・ゴンサーレスの存在感が圧倒的である。透明感のある軽快なピアノの音色がこのアルバムに欠かせない。ソロも素晴らしいが、伴奏も見事である。このアルバムはルベーン・ゴンサーレスのアルバムだと言ってもよいと思っている。

 Amor Verdaderoのリード・ボーカルはマヌエル・プンティリータ・ルシア。ソリストはルベーン・ゴンサーレス(Piano)とバルバリート・トーレス(laoud)である。聞きなれない異国情緒のある音のする弦楽器がバルバリートの弾くlaoud(ラウーと読むらしい)であろう。よく聴いていると、ルベーン・ゴンサーレスのピアノですとかバルバリート・トーレスです(だと思う)とかの掛声が入るので誰が弾いているか判りやすい。軽快で楽しい曲。

 Alto Songoでは、ラウル・プラナス、ピオ・レイバ、マヌエル・プンティリータ・ルシア、ホセ・アントニオ・マセオ・ロドリゲスの順でリード・ボーカルをとっている。ソロを弾いているのはグアヒーロ・ミラバル(Trumpet)、ライ・クーダー (Slide Guitar)、ルベーン・ゴンサーレス(Piano)である。

 Habana del Esteは哀愁を感じさせる旋律が美しい。南国の夕日に染まる海岸が目に見えるようだ。そこには椰子の木が茂っていなければならない。さて、ソリストはリカルド・エグエス(flute)とオルランド・カチャイート・ロペス(Bass)だ。そろそろスペイン語の名前を片仮名で書くのも面倒になってきた。Richardはスペイン語だと「リカルド」になると思うが、自信はないのである。Orlandoもオランドかオルランドかオーランドか良く判らない。オルランドではないかと思うのだが・・・・・・。

 A Toda Cuba Le Gustaではラウル・プラナスのボーカル、グアヒーロ・ミラバルのトランペット、ハビエル・サルバのバリトン・サックスが聴ける。これも非常に乗りの良い楽しい曲。

 Fiesta de la Rumbaではファン・デ・マルコスのトレスが聴ける。曲の冒頭で聴けるアラブの楽器のような音がする弦楽器の音がそれであろう。リードボーカルはフェリックス・バロイ。打楽器だけの伴奏で始まる特徴ある曲である。

 しかし、このCDに付属しているライナーノーツには力が入っていて、キューバの音楽について、そして収録されている楽曲について説明が書かれているらしく、英語がスラスラ読めたなら大変参考になることが書かれているようなのである。私にはその能力はないのであるが。もう少し英語の勉強をしておくのだった。少年老い易く学成り難し。私はもう中年(初老?)だが。

 Los Sitio’ Asereはフェリックス・バロイとホセ・アントニオ・マセオ・ロドリゲスがリードボーカル。ファン・デ・マルコス(tres)とルベーン・ゴンサーレス(piano)がソロを弾いている。

 Pío Mentirosoはタイトルのとおりピオ・レイバが歌っている。トランペットのソロはグアヒーロ・ミラバルだ。この曲はこのアルバムの中でも聴きやすく楽しい曲だ。

 María Caracolesではイブライム・フェレールのリードボーカルが聴ける。ソリストは、マヌエル・アンガ(congas)とグアヒーロ・ミラバル(trumpet)だ。これも聴きやすく楽しい。このアルバム全体に言えることだが、打楽器が素晴らしい。特にこの曲の冒頭で聴けるコンガのソロは聴きごたえがある。

 そして、ルベーン・ゴンサーレスの見せ場が、Clasiqueando con Rubénである。リードボーカルは入らない。ソロを弾いているのはルベーン・ゴンサーレス(piano)、グアヒーロ・ミラバル(trumpet)、アンガ(congas)、カルロス・アルバレス(trombone)である。ルベーン・ゴンサーレスの弾いているのはクラシック風の旋律。ハイドンやバッハの曲に似せた旋律を作ったらしい。多分・・・・・・。

 最後の、Elube Changóまであっという間に聴き終えてしまう。この曲はファン・デ・マルコスが主役の曲。リードボーカルとトレスのソロを彼が担当している。他にソロを弾いているのは、グアヒーロ・ミラバル(trumpet)、デメトリオ・ミニス(trombone0)、アンガ(congas)だ。豪華な曲。

 ライナーノーツを眺めながらアルバムを通して聴くのは初めてかも知れないが、これはこれまでの私がしていたように聞き流してしまうには惜しい作品だ。できれば、音楽専用の再生装置の前でゆったりと坐って聴いてもらいたい作品である。いろいろと忙しい現代社会では、そうして音楽に向き合う時間がとりにくいのが事実なのではあるが。

 ライナーノーツの最後には次のように書かれている。ファン・デ・マルコス・ゴンサーレスの言葉だ。やはり、このアルバムの本当の主役はルベーン・ゴンサーレスだったようだ。全曲を通して素晴しいピアノ演奏を披露してくれたルベーン・ゴンサーレス。素晴らしいピアニストである。

“This album is dedicated to Ruben Gonzalez, genius of Cuban piano.”

Juan de Marcos González

このアルバムをキューバン・ピアノの天才、ルベーン・ゴンサーレスに捧げます。

ファン・デ・マルコス・ゴンサーレス。

Eddie Palmieri / El Rumbero del Piano

評価 :5/5。

1998年作品

 これは、エディー・パルミエリ(Eddie Palmieri)の代表作ではないが、私にとっては特別な作品だ。それは、私が聴いた最初のエディー・パルミエリのアルバムがこれだったからである。

Music

  1. Sube (Tony Taño)
  2. Café (Eddie Palmieri/ Robert Gueits)
  3. Pas D’histoires (Eddie Palmieri)
  4. Malagueña Salerosa (Pedro Galindo/ Elpidio Ramírez)
  5. El Dueño Monte (Eddie Palmieri)
  6. Dónde Está Mi Negra (Eddie Palmieri)
  7. La Llave (Jesús Alfonso)
  8. Oigan Mi Guaguancó (Arsenio Rodríguez)
  9. Para Que Escuchen (Eddie Palmieri)
  10. Bug (Eddie Palmieri)

 二十年ほど前のことになるが、当時所帯を持ったばかりで金銭的余裕がなかった私は、図書館でCDを借りて聴くことが多かった。その、図書館で借りたCDの中にこのアルバムが含まれていたのである。借りたCDをパソコンに取り込んだから、今もこのアルバムはCDを所有していない。

 実は、エディー・パルミエリのアルバム(CD)は大量に所有しているので、このアルバムも当然手元にあると思っていた。しかし、この記事を書くためにライナーノーツを見ようと思って探してみると手元にない。どうやら、借りたCDから取り込んだデータがあるので、コレクションから漏れていたようである。この先、手に入れられなくなる可能性があるので、たった今Amazonで註文しておいた。

 エディー・パルミエリの作品としてはこれはそれほど重要性の高いアルバムではないかも知れない。このアルバムの他に、彼が新しい音楽ジャンルを切り拓いた記念すべきアルバムがたくさんある。そして、成功者である我が敬愛するエディーが、お気に入りのミュージシャンたちを集めて、いつものラテンアルバムを作成したのが、このアルバムなのだ。だが、音楽というのは重要な作品から聞かなければならないという決まりはないわけで、事実、私もこのアルバムでエディー・パルミエリを知って、今や大ファンになっているわけだ。

2019年4月12日ブルーノート東京にてエディー・パルミエリのコンサートの前に

 註文したアルバム(CD)が手元に届いたので、演奏者を記載していきたい。このアルバムは曲ごとに演奏しているミュージシャンが異なり、全曲通して演奏しているのはエディー・パルミエリだけではないかと思うくらいだ。ライナーノーツには曲ごとに演奏者がズラリと書かれていて、これをまとめて記載するのは大変な作業である。作曲者は冒頭の曲名の後に括弧書で記しておいたので参考にしてもらいたい。

 というわけで、私の知っているミュージシャンに限って、どの曲で演奏しているか、歌っているかを記すにとどめたいと思う。

 まず、著名なジャズ・ミュージシャンの曲をラテン音楽として演奏したライブ・アルバムを多数出しているトロンボーン奏者、コンラッド・ハーウィグ(Conrad Herwig)が参加している。全曲とおして演奏しているのはエディー・パルミエリくらいと書いたばかりだが、ライナーノーツをよく見てみると彼も全曲でトロンボーンを演奏していることが判った。エディーのお気に入りのミュージシャンのようである。

 ヴォーカルはエルマン・オリベイラ(Hermán Olivera)(1、2、4、6、8、)とウィチー・カマーチョ(Wichy Camacho)(3、5、7、9)の二人。このうちエルマン・オリベイラはブルーノート東京でのライブで、その歌声を何度か直接聴いている思い出深いヴォーカリストである。長身の彼は、マラカス(というのだろうか)を振りながら、のびのびとした声で歌う素晴しい歌手であった。自身の名義のアルバムも何枚か出している。

 「Oiga Mi Guaguanco」でトレス(Tres)でソロを弾いているのはネルソン・ゴンサーレス(Nelson González)だ。エルマン・オリベイラの「アディオス、ネルソン・ゴンサーレス」という声を聞き取ることができる。彼は「Café」でもトレスを弾いていると書かれているが、その演奏を聴き分けることはできなかった。「only background」と書かれているから、目立たないのであろう。この人の演奏もブルーノート東京で何度か聴いている。とても几帳面な感じの小柄な方である。

 最後の曲「Bug」ではBryan Lynchもトランペットで参加している。このアルバムの参加ミュージシャンについては、Discogsのページが詳しいので、興味のある方はご覧いただきたい。ただ、手元にあるライナーノーツと全てを比べたわけではないので、その正確性を保証することはできないのだが。

 このブログを書くために手に入れたライナーノーツと日本語訳歌詞をみていて気付いた。アルバムについてくるこれらのアイテムには、音楽をより深く楽しむためのヒントが隠されているということに。これまでの私は音楽さえ聴ければよいと思い、ライナーノーツはろくに見もせずに一瞥しただけでしまいこんでいた。しかし、音楽を聴きながら参加ミュージシャンを知り、歌詞を理解することで、今まで聞き流していた音楽の新しい楽しみ方に気付かされたのである。何ということだ。このアルバムに初めて出会ってからおそらく二十年以上の間、私はその機会を手に入れようとしてこなかったのである。

 ライナーノーツをみながら音楽を聴くと愉しいのだ。若かった頃は、アルバムを買うとライナーノーツをなめるように読んで、アルバムも繰り返し何度も聴いたものである。アルバムを買うという行為が特別のものではなくなってからは、真剣にアルバムと向き合うというような聴き方を忘れてしまっていたようである。単純に多忙であるためであったのかも知れないが。

 さて、このアルバムの中で特に秀逸なのは「Café」だ。この曲はエディーの古いアルバム「Echando Pa’lante (Straight Ahead)」でも聴くことができる。古い録音ではもっと遅いテンポで味のある演奏であった。が、このアルバムでは、より切れのあるリズムと演奏を聴くことができる。エディーのピアノもより情熱的である。この曲に限らず、このアルバム全体に打楽器のリズムが洪水のように溢れている。どの曲を聴いてもリズムに浸ることができる楽しいアルバムである。

 「Pas D’histoiries」は非常にテンポの良い曲。歌詞カードを見ると「俺の音楽に文句を付けないでくれ。ルンバを続けてくれ。」という意味らしい。歌手はウィチー・カマーチョ。「Malagueña Salerosa」はディー・パルミエリの曲ではないが、この曲で聴けるエディーのピアノソロも秀逸である。「El Dueño Monte」で聴けるウィチー・カマーチョの声も印象的だ。エディーのソロも素晴らしい。叫びながら弾いているのがわかる大変な熱演である。ともかく、全曲通してあっという間に聴き終えてしまう。

 「Oiga Mi Guaguanco」は、冒頭で聴ける十秒以上にわたる打楽器だけの演奏が珍しくて楽しい。打楽器だけの部分が終ったあとの曲ももちろん愉しい。これは、エディーから見ても先達のアルセニオ・ロドリゲス(Arsenio Rodríguez)の曲である。

 アルバムの最後を飾る曲「Bug」はジャズと言って良いだろう。ベーシストはジョン・ベニテス(john benitez)に代っている。 音を聞くとダブルベース(ウッドベース)のようだ。前述のとおりブライアン・リンチが演奏に加わっているから、当然彼がソロを吹きまくっているのかと思ったら、リンチは第一トランペットなのだが、ソロは第二トランペットのTony Lujanが演奏しているらしい。思い込みというのは怖いものである。ジャズのアルバムも出しているコンラッド・ハーウィグはソロを演奏している。

 長々と書いてしまったが、エディー・パルミエリを聞いたことがない方におすすめのアルバムである。素晴らしいよ。このアルバムは。

Eddie Palmieri / Vamonos Pa’l Monte

評価 :5/5。

1971年作品

Music

  1. Revolt/La Libertad Logico
  2. Caminando
  3. Vamonos Pa’l Monte
  4. Viejo Socarrón
  5. Yo No Se
  6. Comparsa De Los Locos
  7. Viejo Socarrón (Take 9)(Bonus Track)
  8. VP Blues(Bonus Track)
  9. Mixed Marriage(Bonus Track)
  10. Moon Crater 1 (Lyndsay’s Raiders)(Bonus Track)

Musicians

  • Eddie Palmieri Band Leader
  • Ismael Quintana Vocal
  • Bob Vianco Guitar
  • Jose Rodriguez Trombone
  • Alfredo Armentereos Trumpet
  • Ronnie Cuber Baritone Saxophone
  • Nick Marrero timbales Bongo
  • Eladio Perez Conga
  • Arturo Franquiz Claves, Chorus
  • Monchito Munoz Bombo

Spetial invited guest

  • Charlie Palmieri Organ (solo)
  • Victor Paz Trumpet (Revolt/La Libertad Logico)
  • Charles Camilleri Trumpet (Caminando)
  • Pere Yellin Tenor Saxophone (intro Yo No Se)

Chorus

Santos Colon, Justo Betancourt, Marcelino Guerra, Yayo El Indio, Elliot Ramero, Mario Munoz

 このアルバムのCDは二枚持っている。最初に購入したのはボーナストラックの収録されていないもの、そして二度目に購入したのがボーナストラックの収録されているリマスター盤である。ボーナストラックのうちVP Blues、Mixed Marriage、Moon Crater 1 (Lyndsay’s Raiders)はここでしか聞けないもので、私はこの三曲が聴きたいためにリマスター盤を購入したのであった。

 エディー・バルミエリ(Eddie Palmieri)は、50年を超えるその長いキャリアのなかで、さまざまな演奏スタイルを採用してきた。ジャズに近い曲、オーソドックスなラテン音楽、そして打楽器が強力にフィーチャーされた曲。彼はハード・ラテンというスタイルを作り出した人物であるとされているが、一貫して変らないのは、彼の演奏する音楽がいつもラテン音楽だということである。

 そして、その巨匠(マエストロ)Eddie Palmieriの代表作の一枚がこのアルバムなのである。もしもこの巨匠を知らなかったとしたら、このアルバムを聴いてみると良いだろう。

 最初の「Revolt/La Libertad Logico」から、リズムの洪水に飲み込まれる。ブラスが強力に吹き鳴らされ、カウベルとボンゴ、コンガの音が心地よい。まさにハードである。スペイン語の歌詞は全く解らないのだが、革命という題名から想像すると、物騒な内容のようである。La Libertad Logicoは直訳すると論理の自由という意味だから、思想の自由ということだろうか。

 アルバム・タイトル曲の「Vamonos Pa’l Monte」では、いつものピアノだけではなく、オルガン(ハモンド・オルガンか)を聴くことができる。この曲もノリのよい曲だ。表題の意味は「山へ行こう」。都会は雑踏だが、山へ行けば清々しい気分になるぜ、と歌われていると勝手に思っている。ここでオルガン・ソロを弾いているのはエディーの兄、チャーリー・パルミエリ(Charlie Palmieri)。兄弟でも、紡ぎ出される旋律はエディーのものと明確に異なることが判るだろう。

 「Comparsa De Los Locos」は最近のライブでも良く演奏される曲。表題は「狂気の外観」という意味。どういう意味? 確かにぶっ飛んだ曲です。ある意味凄い。Blue Note Tokyoで観たコンサートでもこの曲が演奏されていたと記憶している。

 しかし、エディー・パルミエリの楽団(EDDIE PALMIERI SALSA ORCHESTRAの名で登壇していた)の技術は素晴らしい。一発録りでアルバムが作れてしまうのではないかと思うほど完璧な演奏を聴かせてくれるのである。

 エディーの演奏をもう一度生で聴くことができるだろうか。いや、是非にももう一度聴きたいと思っている。

Fania All Stars / Live At The Cheetah Vol.1

 一曲目はメンバー紹介である。音楽に乗せて、ファニア・オールスターズの面々を一人ずつ紹介していく。私にはどこまでが正式のメンバーかは判らないが、中にはゲスト出演もいるらしい。ジョニー・パチェーコ(マエストロと紹介されている)以下、ロベルト・ロエーナ、ラリー・ハーロウ、ロベルト・ロドリゲス、レイナルド・ホルヘ、ウィリー・コローン、ボビー・クルーズ、エクトル・ラボー、エル・コンテ・ロドリゲス、アダルベルト・サンチアゴ、イスマエル・ミランダ、チェオ・フェリシアーノ、ボビー・バレンティーン。(全部聴き取れてませんよ、多分。気になる人はCDを手に入れて見るべし。)

 言葉にすればただそれだけのことなのだが、のっけからすさまじいリズムの洪水で何もかも忘れさせられる。後は最後まで音楽に浸るだけだ。説明は要らない。そんな、素晴らしい作品である。二曲目はあの「Descarga Fania」だ。この曲が聴きたくて私はこのCDを購入したのだが、どうしたわけかメンバー紹介のほうをより頻繁に聴いているようだ。

 エディ・パルミエリ、アルトゥーロ・サンドヴァル、ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ、などのサルサ、ラテンジャズ、その他のラテン音楽が好きな方には特にお薦め。

 ちなみに、サザン・オールスターズのグループ名はこのファニア・オールスターズからとったということらしい。「サザン」のほうは良く判らないが、こちらアルバムを何枚も出したスターが集まった本当の「オールスターズ」だ。

Buena Vista Social Club at Carnegie Hall

評価 :4.5/5。

2008年作品

 録音は1998年7月1日。
 本作の発売は2008年。

 発売まで何故十年以上の歳月が必要だったのかは分からないが、聴いてみると音質に古さは感じない。スタジオ録音の前作に劣らない音質と言っても、過言ではないと思う。

 演奏もさすがは重鎮という感じで、ライブ録音ながら安心して聴いていられる。楽しんで演奏している様子である。

 聴いていても楽しい。

 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの十年振りの、そして彼らの高齢を考えると最初で最後の続編となろう。

 買って後悔することのない一枚。

 お薦めだ。

Buena Vista Social Club

評価 :5/5。

1997年作品

 世界的に大ヒットしたので、曲は聴いたことがなくても、「ブエナ・ビスタ」という言葉くらいは記憶に残っている方が多いのではないか。

 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(Buena Vista Social Club)はライ・クーダーが、キューバの引退し半ば忘れ去られた老ミュージシャン達を呼び集めて結成されたグループである。

 映画も秀逸。

 イブライム・フェレール(Ibrahim Ferrer)、ルベーン・ゴンサーレス(Rubén González)、コンパイ・セグンド(Compay Segundo)、オマーラ・ポルトゥオンド(Omara Portuondo)他、多数のミュージシャンが参加している。

 キューバの音楽って、良いね。特に私はアフリカ由来のリズムが好きだ。

 音楽の世界にアフロ・キューバン(Afro Cuban)という言葉があることで判るとおり、植民地支配時代に、アフリカからたくさんの奴隷がつれてこられ、その文化的影響を大きく受けているのがキューバ音楽なのだ。

これぞ名盤 Eddie Palmieri / Palo Pa Rumba

 言わずと知れた Eddie Palmieri の名盤。
 Palo Pa Rumba も素晴らしいし、Venezuela も傑作である。

 Eddie Palmieri の作品としては、最初に紹介したい作品であったのだが、残念なことに現在は入手困難となっている。
 入手可能となった時点で、気が付けばまた紹介しようと思うが、今は手軽に入手する方法を私は知らない。

 残念だ。

【2021年9月13日追記】現在もCDは入手困難な状態が続いているが、MP3データは購入できるし、Amazon Music Unlimited でも聴くことができる。Eddie Palmieri の最高傑作の一つなので、是非にも聴いてみることをおすすめする。

Eddie Palmieri / Superimposition

 Eddie Palmieriはプエルトリコ系のアメリカ人。
 音楽の傾向は、Tito PuenteやFania All-Starsに近い。今は亡き、ラテン音楽ピアニストのCharlie PalmieriはEddieの実の兄である。

 1曲目からEddie Palmieriらしい強力なサルサが炸裂する。これもMP3ダウンロード版が安くなっていて、お薦めだ。希少版が安価で簡単に購入できるのだから、いい世の中になったものだ。
 Pa’ Huele、Chocolate Ice CreamはIn Concert at the University of Puerto Rico でも演奏されている曲。

 このCDは1971年の作品。全曲傑作だと思うが、私は3曲目のBilongoが特に好きだ。

 お薦めします。

Eddie Palmieri / Vamonos Pa’l Monte

 ラテン音楽、サルサが好きな人なら御存じ、サルサの重鎮Eddie Palmieriの代表作である。このCDはEddie Palmieriとしては珍しく、生音のピアノだけではなく、ハモンドオルガンやシンセサイザーなどを多用した作品となっている。

 どの曲も素晴らしいが、1曲目のRevolt/La Libertad Logico、3曲目のVamonos Pa’l Monte、5曲目のYo No Se、6曲目のComparsa de Los Locosが特にお気に入りだ。 Vamonos Pa’l MonteはIn Concert At The University Of Puerto Ricoの冒頭で、暴力的なまでの迫力で演奏される名曲だ。ハモンドオルガンのうねりと打楽器の洪水に身を浸せば、リズムに合せて体を動かさずにはいられない。

 一転してYo No Seはゆったりした曲調でしっとりと歌を聴かせるタイプの曲。そしてComparsa de Los Locosは打楽器のリズムが前面に出た迫力満点の作品だ。まさに打楽器に始まり打楽器に終る曲と言って良いだろう。

 ところで、このCDには、オリジナル版の他に「Masterworks」といふ副題(?)のついたバージョンがある。こちらはオリジナル版に収録の6曲に加え、ボーナストラック4曲が収録されている。私はEddie PalmieriのCDは40枚以上所有してゐるが、このボーナストラックとして収録されてゐる音源は他のどのCDでも聴くことのできない貴重なものだ。9曲目に収録のMixed Marriageと10曲目のMoon Craterとは特に貴重。楽曲自体が他では聴くことのできないものだからだ

 私はこの「Masterworks」版が発売される前にオリジナル版のCDを所有していたため、「Masterworks」版を新たに買いなおすこととなった。これから入手するのなら、Masterworks Vamonos Pa’l Monteを買うほうが無難だろう(註)。

 お薦めの一枚だ。

註:執筆当時のはなし。2021年8月現在、Masterworks Vamonos Pa’l Monteは品薄のため入手困難になっている。