2001年作品
これは、イパネマスの復帰後最初のアルバム。新生The Ipanemasの実質的ファーストアルバムだ。ライナーノーツを参考に、曲名と演奏者の情報を記しておく。曲名は簡単に調べられるが、演奏者の情報は、見付けにくいので貴重な情報になるはずだ。
Music
- Sacunda
- Birinight
- Sacunde
- Icarai
- Balaio
- A Saudade E Que Me Consola
- Chorinho A
- Berimbaco
- Batecoxa
- Verao
- Miragem
Musicians
- WILSON DAS NEVES : Drums / Vocals / Percussion / Lead vocal on Track6
- NECO : Acoustic Guitar / Vocals / Cavaquinho track 4
- JORGE HELDER : Bass / Vocals / Guitar track 4
- MAMAO : Drums / Vocals / Guitar track 1
- DUDU LIMA : Bass
- PAULO WILIAMS : Trombone
- DON CHACAL : Percussion
- ZEZINHO : Percussion
- MARVIO CIRIBELLI : Acoustic Piano
ライナーノーツを見て解ることは、まず最初にネコの表記がNécoからNecoに変ったことである。そして、全ての曲でネコ(neco)がギターを弾いているのではないということだ。track 1(Sacunda)でギターを弾いているのはMamaoことIvan Contiだ。そして、track 4(Icarai)ではネコがカヴァキーニョ(Cavaquinho、ウクレレに似たブラジルの民族楽器)を弾く代りにJorge Helderがギターを弾いている。Icarai終盤で聞える余韻の少ないナイロン弦ギターに似たトレモロ奏法で弾かれている音がカヴァキーニョの音なのだろう。
track 6(A Saudade E Que Me Consola)でリードボーカルをとっているのは、御大、ウィルソン・ダス・ネヴィス(wilson Das Neves)だ。track 8のBerimbacoでは彼の演奏するビリンバウ(ブラジルの民族楽器)の不思議な音色を存分に楽しむことができる。track 10(Verao)では、トロンボーンののびのびとした音色が心地よい。この曲で聴ける生音のピアノを演奏しているのはマルヴィオ・シリベッリ(Marvio Ciribelli)だ。
Birinightで聴けるギターの音色が心地よい。ライナーノーツの情報から判断するとこれを弾いているのはネコなのであろう。ゆったりしたテンポにのせた爽やかな旋律で、聴いていてリラックスできる。この曲ではネコが主役だ。秀逸である。同じギターはSacundeでも聴くことができる。ウィルソン・ダス・ネヴィスの方がたくさんのアルバムを出していて有名なのではないかと思うが、ネコのギターも存在感では負けていない。
このアルバムのもう一つの聴きどころBerimbacoである。先にも書いたが、他ではなかなか聞くことのできないビリンバウの演奏を堪能できるからだ。長いビリンバウの独奏の後で、突然始まるギターの和音と気怠い感じの歌声、心地よいトロンボーン。曲の後半ではギターの伴奏でビリンバウが聴ける。これも大変良い。ほんと、他では聞けない音楽なのである。
Sacundeで聴けるトロンボーンの野太い音も曲にあっていて良いと思う。この楽器はSacundaでも聴くことができる。A Saudade E Que Me Consolaの冒頭でのびのびとした旋律を奏でているのもパウロ・ウィリアムス(PAULO WILIAMS)であろう。この人も、このアルバムになくてはならない味を出している人だ。この曲(A Saudade E Que Me Consola)で聴けるウィルソン・ダス・ネヴィスの歌声も味があって惹きこまれるところがある。
今回、ブログのために調べたので、このアルバムの演奏者を読み込んだのは自分自身はじめてのことである。ライナーノーツには、音楽を楽しむためのヒントが記されていることに、今更ながら気づかされた。こうして調べておけば、ここで演奏しているミュージシャンの他のアルバムを探して聴いてみるという楽しみにつなげることもできる。イパネマスの他のアルバムでも同じ人が演奏しているかどうか、確認することも可能になる。これまでは、ただイパネマスのアルバムとして漠然と聴いていたのだが、こうして演奏者を確認して新しい音楽の楽しみ方に気付いたような気がしている。
このアルバムで聴ける音楽も、私の知る限り他に類を見ないものだ。ラテン、サンバ、ボサノバ、ジャズ、そんな音楽の香りが感じられるのだが、それらのものを単純に混ぜ合わせたものではない。最初のアルバム(Os Ipanemas)からはボサノバの影響を色濃く感じたが、このアルバムではボサノバの匂いは薄れている。二枚のアルバムの間によこたわる四十年近い音楽活動が、二人の音楽性に変化をもたらしたのだろう。
イパネマスの音楽は独自性の高い素晴しいものだと思う。これはワールド・ミュージックに関心があるようなら、必ず聴いてみるべき素晴らしいアルバムである。
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