Ozzy Osbourne / Diary of a Madman

評価 :5/5。

1981年作品

 前作で暗黒の安息日から脱出して、白魔術に転向したかのように見えたアルバム・ジャケットだったが、今作では悪の化身に逆戻りしてしまったようだ。ジャケットのデザインはいただけないが、音盤から流れ出る楽曲はこの上なく素晴らしい。

Musicians

  • Ozzy Osbourne: Vocal
  • Randy Rhoads: Guitar
  • Bob Daisley: Bass Guitar
  • Lee Kerslake: Drums

 演奏しているメンバーは前作と同じである。このアルバムも、2002年に発売されたリマスター盤でドラムスとベースが別人の演奏に差し替えられるという事件があったけれども、2011年発売のレガシーエディションからは元の音源に戻されている。これから入手するのならば、オリジナルの演奏が聴けるレガシーエディションよりも新しい盤を選ぶべきである。

Music

  1. オーヴァー・ザ・マウンテン – Over the Mountain – 4:31
  2. フライング・ハイ・アゲイン – Flying High Again – 4:44
  3. ユー・キャント・キル・ロックン・ロール – You Can’t Kill Rock and Roll – 6:59
  4. ビリーヴァー – Believer – 5:15
  5. リトル・ドールズ – Little Dolls – 5:39
  6. トゥナイト – Tonight – 5:50
  7. S.A.T.O – S.A.T.O – 4:07
  8. ダイアリー・オブ・ア・マッドマン – Diary of a Madman – 6:14

 全体的に良い曲が多く、はずれのない構成になっているが、私はFlying High Again、 Tonight、S.A.T.O、Diary of a Madmanが特に好きだ。Tonightから続く3曲の素晴らしさは言葉にするのが難しい。Diary of a Madmanの冒頭部分はクラシック・ギターの素養がなければ生まれなかったフレーズだと思う。S.A.T.Oの劇的なところも良い。

 絶対にお勧めの一枚である。

Ozzy Osbourne / Blizzard of Ozz

評価 :5/5。

1980年作品

 ブラックサバス脱退後、オジー・オズボーンがランディ・ローズ(Randy Rhoads)を起用して作成したのがこのアルバムである。ランディはこの後もう一枚のアルバムを録音しただけで飛行機事故でこの世を去ってしまうのだが、ランディ亡き後のオジーのアルバムは格段に質が下がってしまう。異論があるかも知れないが、私はそう思っている。

 オジーのグループに所属する前のランディ・ローズはクワイエット・ライオット(Quiet Riot)のギタリストであったが、そちらの音源を聴いても、際立った個性や感動的な何かはまだ感じられない。ランディにとって、その才能を開花させるためにはオジーとの出会いが必要だったのだろう。

 オジーはあの伝説的グループ、ブラック・サバス(Black Sabbath)のボーカリストとして、既に著名な存在であったけれども、ランディを欠いた後のオジーのアルバムは私の期待したようなアルバムを出すことはなかった。オジー・オズボーンにとっては、天才的なギタリストの存在が不可欠だったのだろう。ブラック・サバスのトニー・アイオミにしても、オジーを支えたランディ・ローズにしても、鬼才と呼ぶにふさわしいギタリストで、作曲の才能は群を抜いていたと思う。彼らの紡ぎ出すギター・リフやメロディーは最高に格好よかった。どちらも、技術的に最高のギタリストではなかったけれども。

Musicians

  • Ozzy Osbourne: Lead Vocals / Harmony Vocals
  • Randy Rhoads: All Guitars
  • Bob Daisley: Bass Guitar / Harmony Vocals / Gongs
  • Lee Kerslake: Drums Percussion / Tubular Bells / Timpani Drums

Music(発売当時)

  1. アイ・ドント・ノウ – I Don’t Know – 5:14
  2. クレイジー・トレイン – Crazy Train – 4:51
  3. グッバイ・トゥ・ロマンス – Goodbye to Romance – 5:34
  4. ディー – Dee – 0:50
  5. 自殺志願 – Suicide Solution – 4:18
  6. ミスター・クロウリー<死の番人> – Mr. Crowley – 4:56
  7. ノー・ボーン・ムービーズ – No Bone Movies – 3:53
  8. 天の黙示 – Revelation (Mother Earth) – 6:09
  9. スティール・アウェイ – Steal Away (The Night) – 3:29

 現在発売されているアルバム(Blizzard of Ozz 40th Anniversary Expanded Edition)では、19曲もの曲がラインナップされているけれども、発売当初に収録されていたのは上記の9曲だ。

 エレキ・ギターを持っていた私は、若かりし頃にランディの演奏を何度もコピーした。クラシック・ギターを持っていなかったので、クラシック・ギターで弾くべきDeeをフォーク・ギターで無理やり演奏したものであった。自分で演奏しても、へたくそでも、美しいメロディーはやはり美しく、自分の指から紡ぎ出される旋律に感動したことを今も覚えている。

 アルバム全体が素晴らしいのであるが、中でも素晴らしいのはやはりMr. Crowleyであろう。重々しいキーボードの旋律に続いて、ドラマチックな曲が始まる。そして特筆すべきはランディ・ローズのギターソロ。旋律の美しさ、劇的な展開、何度聴いたかは判らない。ランディのギターソロがフェイド・アウトしてしまうのを何度恨めしく思ったことだろう。大変な傑作である。 

 Deeはランディ・ローズのギターソロ。大変短い曲だが、クラッシック・ギターで演奏されるクラシカルなこの曲は、このアルバムの中では異色を放っている。この曲と次のアルバムのタイトル曲Diary of a Madmanで聴ける前奏部分は、ランディのクラシック・ギターの素養がなければ生まれなかったものだろう。

 Revelation (Mother Earth)も劇的で、素晴らしい曲である。若いころ、雪の日に屋外で聴いたときに体がしびれるほど感動してしまった。音楽好きの私は、いつも楽曲を聴きながら移動しているのだが、自分の置かれた状況と優れた音楽が相俟った時にもたらされる特殊な効果はなかなか味わえないものだ。この曲もランディのギターソロが素晴らしい。

 忘れてはならないのが、Goodbye to Romanceだ。歪まないエレキ・ギターのアルペジオにのせたオジーの歌が爽やかで、心温まると言っても良いような曲である。次の曲Deeに続く展開も良い。重々しく、劇的な曲の中には、こういう曲も必要だ。レッド・ツェッペリンのThank Youのように。

 途中、ボブ・デイズリー、リー・カースレイクとのいざこざのために、この二人の演奏が別人の演奏に差し替えられるという「事件」があったけれども、現在新しく入手可能なものは、当初の演奏に戻されている。

 最高におすすめの一枚である。聞いたことがないなら、手にしてみて損はないはずだ。

Anker Soundcore Life Q30 の使用感

評価 :4.5/5。

 Anker Soundcore Life Q30を買ってから三週間以上経ったので、このノイズ・キャンセリング・ヘッドホンの使用感について記してみたい。

 ヘッドホンの機能やボタンの配置などについては、多数のレビューを簡単に見つけることができるので、二番煎じはやめにして、私がどう感じたのかを中心に記していくことにしたい。

ノイズ・キャンセリングの効き具合

 これはかなり良い。窓が開いた状態で電車が地下を走っている(地下鉄のような)轟音の中でも、音楽を楽しむことが可能になった。ノイズ・キャンセリングの効果で轟音が完全に消え去るわけではないが、かなり小さくなる。このヘッドホンを使用すれば、音楽の音量をそれほど上げなくても、それぞれの楽器の音が聞き分けられるようになった。

 とりわけ、適切な音量のままで、しかも轟音の中でもベース・ラインがしっかり聞き分けられるのは評価したい。ノイズ・キャンセリングの効果と、製品から出る豊かな低音のおかげだろう。

 このヘッドホンを使用すれば電車の中で映画を見ることも可能である。ただ、台詞の声が小さくなったときに、少し音量を上げる必要が生じるかもしれない。

 十分に静かな環境だと思っていても、イヤホンの電源を入れたときに環境音がスッと消えるのは愉快なものである。

音質

 これも合格点である。個人的な経験ではあるが、安物のイヤホンやヘッドホンでも静かな部屋で試してみると驚くほど高音質に感じるものだ。音楽観賞には静けさがどんな高級な音響機器の代りになりうるのである。また、イヤホンよりはヘッドホンの方が低音がきちんとなる機器が多い。低音の聴こえない音楽ほど味気ないものはない。騒音を減らすヘッドホンであるこの製品に期待して購入した私の選択は、正解だったのであろうか。

 このブログを書くために、電車の中で何曲か注意深く聴いてみた。

 ビル・エヴァンスの「愚かなり我が心(My Foolish Heart)」では、音量を上げなくてもウッド・ベース(コントラ・バス)の深い響きがしっかりと聞えてくるし、スネア・ドラムをブラシでこする繊細な音もきちんと聞き取ることができる。ビル・エヴァンスのピアノも綺麗だ。美しいと思う。ジャズ・ピアノ・トリオの音楽を十分に楽しく聴くことができた。

 エディー・パルミエリのカフェ(Café)(El Rumbero del Pianoの新しい録音)では、しっかりとした低音の上で、さまざまな打楽器がきちんと聞える。コーラスもヴォーカルも前面に出てくる。エディーのピアノも綺麗だ。トランペットも、トロンボーンもよい。ラテン音楽も全体的に楽しく聴ける音だ。

 最後にジプシー・キングスのインスピレーションを聴いてみる。スパニッシュ・ギターのメロディーが美しく、バック・ギターもよく聞こえる。ベースもしっかりと聞えている。パルマ(手拍子)も歯切れよくなっている。全体的に包まれ感のある美しい音。電車の中でも音楽を楽しく聴くことができる。生音のギターも美しい音で聴くことができた。

 多様なイコライザーのプリセットが売り物ではあるが、私は標準設定(「デフォルト」と書かれている設定)が気に入っている。ジャズもラテンもハードロックもクラシックも、これ一択だ。だから、私にとっては、この多様なイコライザー設定は無用の長物である。ただ、音質の好みは人それぞれだろうから、選択肢がたくさん用意されていることは評価すべきだろう。

 全体的に豊かな音で、ヘッドホンならではの耳元の空間のなせる業なのか、音には包まれるような心地よさがある。低音は豊かで、中高音も綺麗だ。ベース、ギター、ドラムス、ヴォーカル、トランペット、サクソホン、フルート、ボンゴ、コンガ。どれもしっかりと音を届けてくれる。電車の中で音楽を聴いていても、聞き取りにくい音域はないと感じる。

接続コーデック

 製品としてはSBCとAACに対応しているはずだが、手持ちのアンドロイド端末(スマートフォン)では、SBCでしか接続できなかった。いろいろ調べてみた結果、スマートフォンがハードとしては対応していても、権利の関係でAAC接続することができないのだろうと判断した。そのため、音質や遅延、接続性についてはSBCで接続した状態での評価である。

接続性

 街を歩いているとき、電車に乗っているときは完璧な接続性で、途切れることはほぼない。

 接続が途切れがちになるのは、駅のホームを歩いているときだ。電車から降りたとたん、音楽がブツブツ途切れるのは残念な所である。特に新宿駅のホームにいる時は頻繁に音が途切れる。が、駅のホームを歩くのは短時間だから、これは許容範囲と感じている。不思議なことに地元の駅では接続が途切れることはない。新宿駅とは別のターミナル駅でも途切れやすくなるので、複数のプラットフォームを持った駅の何かがBluetoothを邪魔しているのだろう。

遅延の有無

 電車の中でAmazonプライムビデオをみても、特に遅延は感じない。一般にSBCというコーデックは遅延が生じるとされているようだが、実用上は特に問題はないようだ。音楽鑑賞、動画視聴には特に問題ない機器に仕上がっていると思う。

 音楽ゲームなどをする場合など、シビアなタイミングを求める場合はこの限りではないかも知れない。私はそのような用途には使わないので、評価できないのである。

 ちなみに、有線接続は音が出ることを確認しただけで、日常的には使用していない。そのため、この記事の評価は全てBluetooth接続して使用した結果によるものである。

装着感

 これは微妙だ。耳の形は百人百様なので、これはあくまでも私が使用した場合の感想であるが、左耳がイヤホンの内側に当って痛く感じることがある。ところが、電車の遅延のため五時間付けていても痛くならない日もあるのが微妙と評したゆえんである。耳に当った違和感は、片道二時間の通勤で我慢できる程度のものなので、これも許容範囲だ。

 ヘッドホンのイヤー・パッドや、頭頂部が当る部分のクッションは柔らかで問題は感じない。

 ヘッドホンの締め付ける力はやや強め。屋外で使用することを考えると、意図せず外れてしまうのを防ぐためには必要な強さなのだろうが、顎関節症の私は顎の関節が違和感を感じることもある。が、これも、許容できる範囲だろう。

 全体的な満足度

 この値段でこれだけの機能を持った製品が手に入れられる。良い時代になったものだと思う。

 窓を開けて走行する電車の中でどこかに隠れてしまっていた音楽は、このヘッドホンを使用することでまた私のもとに戻ってきてくれた。このヘッドホンは、今や、通勤に手放せない製品となっている。

 全体的な満足ととしては、私は Anker Soundcore Life Q30 に十分満足している。音楽を聴いたりビデオを見たりすることで、長時間の通勤時間を多少なりとも有意義なものにするために、このヘッドホンはなかなか有用なものである。

 まだ短期間しか使っていないが、今のところ良い買い物をしたと思っている。

難波弘之 / Party Tonight

評価 :4/5。

1981年作品

 三十年前のアルバムだが、今なお新品を購入することができるのは名盤の証(あかし)だろう。キーボードの名手にして作曲家、プログレの貴公子、難波弘之の二枚目のアルバムである。が、最初のアルバム「Sense of Wonder」はジャズあり、ハード・ロックあり、プログレッシブ・ロックありといった具合で、音楽の方向性が見えてこないアルバムだった。

 それに対して本作は、全体にプログレの軸が一本通っている。特に、そうる透と田辺モットの参加する「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」は圧巻だ。この二人は、難波弘之とSense of Wonderを結成して、「飛行船の上のシンセサイザー弾き」でも、その冴えた演奏を聴くことができる。

Music

  1. Overture
  2. パーマー・エルドリッチの三つの聖痕
    • Eyes
    • Hands
    • Teeth
  3. 夢中楼閣
  4. パーティ・トゥナイト(地球を遠く離れて)
  5. ロスト・ラブ(雨の宇宙空港)
  6. 渇きの海
  7. シルバーグレイの街

Musicians

  • All Keyboards & Vocals – 難波弘之
  • Chorus 椎名和夫、難波弘之(2)、山下達郎、鈴木宏子、和田夏代子、吉田美奈子(7)
  • Percussion – マック清水(4)、山下達郎 (3, 4, 7)、浜口茂外也 (7)
  • Drums – そうる透 (2)、青山純 (3, 4, 6, 7)
  • Bass – 田辺モット (2)、伊藤広規 (3, 4, 6, 7)
  • Guitar – 北島健二 (3, 6)、椎名和夫 (4, 7)

 「夢中楼閣」と「渇きの海」とは難波弘之のアルバムでしか聞けないサウンド。特に渇きの海は面白い構成で、私は結構好きだ。北島健二の無きのギターがすばらしい。

 3、4、7の三曲はポップな曲だが、このアルバムの調和を乱すことはない。難波弘之は小説家でもあって、どの曲もその歌詞の中にSFという別の軸が通っていることが、その調和をもたらしているのかも知れない。

 惜しむらくは、難波弘之の歌唱力がやや物足りないこと。物凄いテクニックで弾きまくるキーボードと比較すると、歌は別人に任せた方が良かったのではないかと思う。しかし、これは難波弘之のリーダー・アルバムなのである。そう考えると、彼の歌にも一応の及第点を付けることは可能である。

 天は二物を与えず、ということか。それを差し引いても、素晴らしい傑作だと思う。

 おすすめしたい。

Eddie Henderson / Shuffle and Deal

評価 :4.5/5。

2020年作品

 これはAmazon Music Unlimitedで見付けたアルバム。Amazon Musicを開いて、ホーム画面のおすすめを何の気なしに聴いてみたら気に入ってしまい、最近はこのアルバムを毎日のように聴いている。そして、ULTRA HDということで、CDよりも高音質で聴くことができるのも気に入っている。

 私は、子供の頃から音楽なしでは過せないほどの音楽好きでだったのだが、ジャズを聴き始めたのが遅く、さらには好きなミュージシャンばかり集中的に聴く性格なので、エディー・ヘンダーソンはこれまで聴いたことがなかったのである。私はハード・ロック好きのギター少年だったのである。エディー・ヘンダーソンは1940年の生まれで、ハービー・ハンコックのグループで演奏していたこともあるようだから、いろいろなジャズをやりつくした人のようだ。一時期ハービー・ハンコックばかり聴いていた時期があるから、そうとは知らずに彼の演奏を聴いたことがあるはずである。

 このアルバムのサウンドは典型的なジャズと言ってよいだろう。非常に洗練されていて、リラックスして聴ける。リズミカルな曲もしっとりとした曲もあって、いつの間にかアルバム最後まで聴いてしまうほどだ。このアルバムでピアノを弾いているケニー・バロンは昔から多数の一流音楽家と共演してきた強者(つわもの)で、このアルバムで聴けるピアノは超一流。このピアノとトランペットとの組合せが私の好みである。

Music

  1. Shuffle and Deal (Eddie Henderson)
  2. Flight Path (Kenny Barron)
  3. Over the Rainbow (Harold Arlen / Yip Harburg)
  4. By Any Means (Cava Menzies)
  5. Cook’s Bay (Kenny Barron)
  6. It Might as Well Be Spring (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II)
  7. Boom (Natsuko Henderson)
  8. God Bless the Child (Billie Holiday & Arthur Herzog Jr.)
  9. Burnin’ (Donald Harrison)
  10. Smile (Charlie Chaplin)

 アルバムリーダーはエディー・ヘンダーソンだが、ケニー・バロンの曲が2曲、ドナルド・ハリソンの曲が1曲含まれていて、選曲のバランスも良いと思う。私は、3曲目のOver the Rainbowや8曲目のGod Bless the Childのようなゆっくりしたテンポの曲が好きだ。ここで聴ける、ケニー・バロンのピアノはとても繊細で美しい。

Musicians

  • Eddie Henderson (Trumpet)
  • Donald Harrison (Alto Saxophone)
  • Kenny Barron (Piano)
  • Gerald Cannon (Bass)
  • Mike Clark (Drums)

Note

Recorded live on December 5, 2019 at Sear Sound Studio C, New York, NY.

 上の表現を見て最初は、いわゆるライブ・レコーディングなのかと思ったのだが、どうも違うようだ。観客を入れてのレコーディングという意味ではなく、スタジオでの一発収録ということなのだろう。Sear Sound Studioというのは、調べてみれば判るが、観客など入る余地のない、単なるスタジオなのである。

 つまり、このNoteの意味はスタジオでの一発録音を言っているのだろう。考えてみれば、それはジャズのアルバムでは珍しいことではない。ジャズという音楽は、再現することのできない演奏(アドリブ)を集めて出来上がっているのだから。

通勤用ヘッドホン Anker Soundcore Life Q30 購入

 通勤用にAnker Soundcore Life Q30を購入した。

 私は音楽が好きで、電車に乗っている間いつも音楽を聴いているのだが、コロナ禍の中、窓が開いた状態で通勤電車が走行するため、騒音がひどくて音楽が楽しめなくなってしまったからである。

 電車の中で音楽で最も重要な低音が全く聞こえなくなってしまったので、イヤホンを変えてみたり、イヤホンのイヤー・ピースを低反発のものに交換してみたりと、いろいろ試したのだが、結局、音楽は私のところに戻ってはこなかった。

 半年ばかり前に非常識なまでに遠い勤務場所に転勤になって、長時間騒音にさらされるのが耐えがたくなってきたのもあり、とうとうノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンを購入してしまったのである。

Anker Soundcore Life Q30

 ノイズキャンセル機能付きのイヤホンも検討したのだが、BOSEやSONYのノイズキャンセル式ワイヤレスヘッドホンに憧れていたので、同じような機能が圧倒的低価格で手に入るAnkerのヘッドホンを選択してみた。イヤホンと比較して、特に低音再生においてドライバーの大きなヘッドホンの方が有利と思われたことも、ヘッドホンを選んだ理由の一つである。

 購入を決めるまでに、レビューを読んだり見たりして随分と調べたのだが、最終的に音質やノイズキャンセリングの効き具合に期待してAnker Soundcore Life Q30を選択した。

私が魅かれたAnker Soundcore Life Q30の機能

  • ノイズキャンセリング機能
  • ワイヤレス接続
  • そこそこの高音質
  • 電池持ちが40時間(ノイズキャンセリングモード)
  • 税込8,990円という圧倒的な低価格
付属のハードケースと説明書
ハードケースを開けたところ

 箱の中には、ハードケースと説明書が収められており、そのハードケースの中にヘッドホン本体とケーブル類が入っている。

付属のAUXケーブルとUSB Type-C / Type-A変換ケーブル

 有線で聴くときはAUXケーブル(両側がステレオミニプラグになっている)でスマートフォンやモバイルプレイヤーとヘッドホンとを接続する。一応音が出るのは確認したが、おそらく出番はないであろう。充電用に入っている USB Type-C / Type-A変換ケーブルは出先で充電したくなったときのために役立つかもしれないので、一応どちらもケースと一緒に持ち運ぶことにしようと思っている。

現在充電中

 家の中では騒音は感じられないのでノイズキャンセルの効き具合を確かめることはできないのだが、ちょっと試してみたところ音質は問題ないと感じられた。

 使い勝手や音質のレビューは、しばらく通勤で使ってからにしたい。特に期待しているのは、ノイズキャンセリング機能の効果である。

 さて、これで通勤時の苦痛が少しは和らげられるだろうか。

Afro-Cuban All Stars / A Toda Cuba le Gusta

評価 :5/5。

1997年作品

 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(Buena Vista Social Club)の先駆けとなった記念すべきアルバム。アフロ・キューバン・オールスターズ(Afro-Cuban All Stars)とブエナ・ビスタ・ソシアルクラブとの関係はやや複雑である。

が、その前にミュージシャンを紹介しておこう。

  • Lead Vocals: Ibrahím Ferrer, Pío Leyva, Manuel ‘Puntillita’ Licea, Raúl Planas, José Antonio ‘Maceo’ Rodríguez, Felix Valoy
  • Tres and leader: Juan de Marcos González
  • Piano: Ruben González
  • Bass: Orlando ‘Cachaito’ López
  • Trumpets: Luis Alemañy, Masnuel ‘Guajiro’ Mirabal, Daniel Ramos
  • Trombones: Carlos ‘El Afrokán’ Alvarez, Demetrio Muñiz
  • Baritone Sax and flute: Javier Zaiba
  • Pertcussion: Miguel ‘Anga’ (congas), Julienne Oviedo (timbales), Carlos González (bongos), Alberto Virgilio Valdés (maracas), Carlos Puisseaux (güiro)
  • Chorus vocals: Alberto Virgilio Valdés,Luis Barzaga, Juan de Marcos González
  • Special guests:Ry Cooder (Slide Guitar ‘Alto Songo’), Richard Egües (flute ‘Habana del Este’), Barbarito Torres (laoud ‘amor Verdadero’)

 このリストを見れば、ブエナ・ビスタとの共通性は明らかであろう。はじめ、ライ・クーダーがキューバのベテラン・ミュージシャンとアルバムを作成する予定であったが、そのキューバ側のまとめ役がファン・デ・マルコスであった。そして合流する予定だったアフリカのミュージシャンのビザが下りなかったために、ファン・デ・マルコスが中心となって先んじて作成されたのがこのアルバムだったのである。そのため、ライ・クーダーもスライド・ギターでアルバムに参加している。

 「Afro-Cuban All Stars」というバンドは、実際にはファン・デ・マルコスが当時すでに引退していたベテラン・ミュージシャンを口説いて寄せ集めたグループなのである。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブとミュージシャンが共通しているのはそんな経緯によるものだ。世界的に有名となったのはブエナ・ビスタの方だが、このアルバムも素晴らしい魅力に満ちている。

 曲ごとにヴォーカリストが異なっていたりするのは、そのためだろう。参加してもらった古老ともいうべきベテラン・ヴォーカリストのそれぞれに花を持たせる必要があったのではないだろうか。ファン・デ・マルコス・ゴンサーレスがこのグループのリーダーで、ほとんどの曲は彼がアレンジしている。このメンバーの中では若手といえる彼が、このアルバムの立役者であったことは間違いない。彼こそがこのアルバムのキーマンなのであった。

 このアルバムを通してルベーン・ゴンサーレスの存在感が圧倒的である。透明感のある軽快なピアノの音色がこのアルバムに欠かせない。ソロも素晴らしいが、伴奏も見事である。このアルバムはルベーン・ゴンサーレスのアルバムだと言ってもよいと思っている。

 Amor Verdaderoのリード・ボーカルはマヌエル・プンティリータ・ルシア。ソリストはルベーン・ゴンサーレス(Piano)とバルバリート・トーレス(laoud)である。聞きなれない異国情緒のある音のする弦楽器がバルバリートの弾くlaoud(ラウーと読むらしい)であろう。よく聴いていると、ルベーン・ゴンサーレスのピアノですとかバルバリート・トーレスです(だと思う)とかの掛声が入るので誰が弾いているか判りやすい。軽快で楽しい曲。

 Alto Songoでは、ラウル・プラナス、ピオ・レイバ、マヌエル・プンティリータ・ルシア、ホセ・アントニオ・マセオ・ロドリゲスの順でリード・ボーカルをとっている。ソロを弾いているのはグアヒーロ・ミラバル(Trumpet)、ライ・クーダー (Slide Guitar)、ルベーン・ゴンサーレス(Piano)である。

 Habana del Esteは哀愁を感じさせる旋律が美しい。南国の夕日に染まる海岸が目に見えるようだ。そこには椰子の木が茂っていなければならない。さて、ソリストはリカルド・エグエス(flute)とオルランド・カチャイート・ロペス(Bass)だ。そろそろスペイン語の名前を片仮名で書くのも面倒になってきた。Richardはスペイン語だと「リカルド」になると思うが、自信はないのである。Orlandoもオランドかオルランドかオーランドか良く判らない。オルランドではないかと思うのだが・・・・・・。

 A Toda Cuba Le Gustaではラウル・プラナスのボーカル、グアヒーロ・ミラバルのトランペット、ハビエル・サルバのバリトン・サックスが聴ける。これも非常に乗りの良い楽しい曲。

 Fiesta de la Rumbaではファン・デ・マルコスのトレスが聴ける。曲の冒頭で聴けるアラブの楽器のような音がする弦楽器の音がそれであろう。リードボーカルはフェリックス・バロイ。打楽器だけの伴奏で始まる特徴ある曲である。

 しかし、このCDに付属しているライナーノーツには力が入っていて、キューバの音楽について、そして収録されている楽曲について説明が書かれているらしく、英語がスラスラ読めたなら大変参考になることが書かれているようなのである。私にはその能力はないのであるが。もう少し英語の勉強をしておくのだった。少年老い易く学成り難し。私はもう中年(初老?)だが。

 Los Sitio’ Asereはフェリックス・バロイとホセ・アントニオ・マセオ・ロドリゲスがリードボーカル。ファン・デ・マルコス(tres)とルベーン・ゴンサーレス(piano)がソロを弾いている。

 Pío Mentirosoはタイトルのとおりピオ・レイバが歌っている。トランペットのソロはグアヒーロ・ミラバルだ。この曲はこのアルバムの中でも聴きやすく楽しい曲だ。

 María Caracolesではイブライム・フェレールのリードボーカルが聴ける。ソリストは、マヌエル・アンガ(congas)とグアヒーロ・ミラバル(trumpet)だ。これも聴きやすく楽しい。このアルバム全体に言えることだが、打楽器が素晴らしい。特にこの曲の冒頭で聴けるコンガのソロは聴きごたえがある。

 そして、ルベーン・ゴンサーレスの見せ場が、Clasiqueando con Rubénである。リードボーカルは入らない。ソロを弾いているのはルベーン・ゴンサーレス(piano)、グアヒーロ・ミラバル(trumpet)、アンガ(congas)、カルロス・アルバレス(trombone)である。ルベーン・ゴンサーレスの弾いているのはクラシック風の旋律。ハイドンやバッハの曲に似せた旋律を作ったらしい。多分・・・・・・。

 最後の、Elube Changóまであっという間に聴き終えてしまう。この曲はファン・デ・マルコスが主役の曲。リードボーカルとトレスのソロを彼が担当している。他にソロを弾いているのは、グアヒーロ・ミラバル(trumpet)、デメトリオ・ミニス(trombone0)、アンガ(congas)だ。豪華な曲。

 ライナーノーツを眺めながらアルバムを通して聴くのは初めてかも知れないが、これはこれまでの私がしていたように聞き流してしまうには惜しい作品だ。できれば、音楽専用の再生装置の前でゆったりと坐って聴いてもらいたい作品である。いろいろと忙しい現代社会では、そうして音楽に向き合う時間がとりにくいのが事実なのではあるが。

 ライナーノーツの最後には次のように書かれている。ファン・デ・マルコス・ゴンサーレスの言葉だ。やはり、このアルバムの本当の主役はルベーン・ゴンサーレスだったようだ。全曲を通して素晴しいピアノ演奏を披露してくれたルベーン・ゴンサーレス。素晴らしいピアニストである。

“This album is dedicated to Ruben Gonzalez, genius of Cuban piano.”

Juan de Marcos González

このアルバムをキューバン・ピアノの天才、ルベーン・ゴンサーレスに捧げます。

ファン・デ・マルコス・ゴンサーレス。

The Ipanemas / The Return Of The Ipanemas

評価 :4.5/5。

 2001年作品

 これは、イパネマスの復帰後最初のアルバム。新生The Ipanemasの実質的ファーストアルバムだ。ライナーノーツを参考に、曲名と演奏者の情報を記しておく。曲名は簡単に調べられるが、演奏者の情報は、見付けにくいので貴重な情報になるはずだ。

Music

  1. Sacunda
  2. Birinight
  3. Sacunde
  4. Icarai
  5. Balaio
  6. A Saudade E Que Me Consola
  7. Chorinho A
  8. Berimbaco
  9. Batecoxa
  10. Verao
  11. Miragem

Musicians

  • WILSON DAS NEVES : Drums / Vocals / Percussion / Lead vocal on Track6
  • NECO : Acoustic Guitar / Vocals / Cavaquinho track 4
  • JORGE HELDER : Bass / Vocals / Guitar track 4
  • MAMAO : Drums / Vocals / Guitar track 1
  • DUDU LIMA : Bass
  • PAULO WILIAMS : Trombone
  • DON CHACAL : Percussion
  • ZEZINHO : Percussion
  • MARVIO CIRIBELLI : Acoustic Piano

 ライナーノーツを見て解ることは、まず最初にネコの表記がNécoからNecoに変ったことである。そして、全ての曲でネコ(neco)がギターを弾いているのではないということだ。track 1(Sacunda)でギターを弾いているのはMamaoことIvan Contiだ。そして、track 4(Icarai)ではネコがカヴァキーニョ(Cavaquinho、ウクレレに似たブラジルの民族楽器)を弾く代りにJorge Helderがギターを弾いている。Icarai終盤で聞える余韻の少ないナイロン弦ギターに似たトレモロ奏法で弾かれている音がカヴァキーニョの音なのだろう。

 track 6(A Saudade E Que Me Consola)でリードボーカルをとっているのは、御大、ウィルソン・ダス・ネヴィス(wilson Das Neves)だ。track 8のBerimbacoでは彼の演奏するビリンバウ(ブラジルの民族楽器)の不思議な音色を存分に楽しむことができる。track 10(Verao)では、トロンボーンののびのびとした音色が心地よい。この曲で聴ける生音のピアノを演奏しているのはマルヴィオ・シリベッリ(Marvio Ciribelli)だ。

 Birinightで聴けるギターの音色が心地よい。ライナーノーツの情報から判断するとこれを弾いているのはネコなのであろう。ゆったりしたテンポにのせた爽やかな旋律で、聴いていてリラックスできる。この曲ではネコが主役だ。秀逸である。同じギターはSacundeでも聴くことができる。ウィルソン・ダス・ネヴィスの方がたくさんのアルバムを出していて有名なのではないかと思うが、ネコのギターも存在感では負けていない。

 このアルバムのもう一つの聴きどころBerimbacoである。先にも書いたが、他ではなかなか聞くことのできないビリンバウの演奏を堪能できるからだ。長いビリンバウの独奏の後で、突然始まるギターの和音と気怠い感じの歌声、心地よいトロンボーン。曲の後半ではギターの伴奏でビリンバウが聴ける。これも大変良い。ほんと、他では聞けない音楽なのである。

 Sacundeで聴けるトロンボーンの野太い音も曲にあっていて良いと思う。この楽器はSacundaでも聴くことができる。A Saudade E Que Me Consolaの冒頭でのびのびとした旋律を奏でているのもパウロ・ウィリアムス(PAULO WILIAMS)であろう。この人も、このアルバムになくてはならない味を出している人だ。この曲(A Saudade E Que Me Consola)で聴けるウィルソン・ダス・ネヴィスの歌声も味があって惹きこまれるところがある。

 今回、ブログのために調べたので、このアルバムの演奏者を読み込んだのは自分自身はじめてのことである。ライナーノーツには、音楽を楽しむためのヒントが記されていることに、今更ながら気づかされた。こうして調べておけば、ここで演奏しているミュージシャンの他のアルバムを探して聴いてみるという楽しみにつなげることもできる。イパネマスの他のアルバムでも同じ人が演奏しているかどうか、確認することも可能になる。これまでは、ただイパネマスのアルバムとして漠然と聴いていたのだが、こうして演奏者を確認して新しい音楽の楽しみ方に気付いたような気がしている。

 このアルバムで聴ける音楽も、私の知る限り他に類を見ないものだ。ラテン、サンバ、ボサノバ、ジャズ、そんな音楽の香りが感じられるのだが、それらのものを単純に混ぜ合わせたものではない。最初のアルバム(Os Ipanemas)からはボサノバの影響を色濃く感じたが、このアルバムではボサノバの匂いは薄れている。二枚のアルバムの間によこたわる四十年近い音楽活動が、二人の音楽性に変化をもたらしたのだろう。

 イパネマスの音楽は独自性の高い素晴しいものだと思う。これはワールド・ミュージックに関心があるようなら、必ず聴いてみるべき素晴らしいアルバムである。

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Eddie Palmieri / El Rumbero del Piano

評価 :5/5。

1998年作品

 これは、エディー・パルミエリ(Eddie Palmieri)の代表作ではないが、私にとっては特別な作品だ。それは、私が聴いた最初のエディー・パルミエリのアルバムがこれだったからである。

Music

  1. Sube (Tony Taño)
  2. Café (Eddie Palmieri/ Robert Gueits)
  3. Pas D’histoires (Eddie Palmieri)
  4. Malagueña Salerosa (Pedro Galindo/ Elpidio Ramírez)
  5. El Dueño Monte (Eddie Palmieri)
  6. Dónde Está Mi Negra (Eddie Palmieri)
  7. La Llave (Jesús Alfonso)
  8. Oigan Mi Guaguancó (Arsenio Rodríguez)
  9. Para Que Escuchen (Eddie Palmieri)
  10. Bug (Eddie Palmieri)

 二十年ほど前のことになるが、当時所帯を持ったばかりで金銭的余裕がなかった私は、図書館でCDを借りて聴くことが多かった。その、図書館で借りたCDの中にこのアルバムが含まれていたのである。借りたCDをパソコンに取り込んだから、今もこのアルバムはCDを所有していない。

 実は、エディー・パルミエリのアルバム(CD)は大量に所有しているので、このアルバムも当然手元にあると思っていた。しかし、この記事を書くためにライナーノーツを見ようと思って探してみると手元にない。どうやら、借りたCDから取り込んだデータがあるので、コレクションから漏れていたようである。この先、手に入れられなくなる可能性があるので、たった今Amazonで註文しておいた。

 エディー・パルミエリの作品としてはこれはそれほど重要性の高いアルバムではないかも知れない。このアルバムの他に、彼が新しい音楽ジャンルを切り拓いた記念すべきアルバムがたくさんある。そして、成功者である我が敬愛するエディーが、お気に入りのミュージシャンたちを集めて、いつものラテンアルバムを作成したのが、このアルバムなのだ。だが、音楽というのは重要な作品から聞かなければならないという決まりはないわけで、事実、私もこのアルバムでエディー・パルミエリを知って、今や大ファンになっているわけだ。

2019年4月12日ブルーノート東京にてエディー・パルミエリのコンサートの前に

 註文したアルバム(CD)が手元に届いたので、演奏者を記載していきたい。このアルバムは曲ごとに演奏しているミュージシャンが異なり、全曲通して演奏しているのはエディー・パルミエリだけではないかと思うくらいだ。ライナーノーツには曲ごとに演奏者がズラリと書かれていて、これをまとめて記載するのは大変な作業である。作曲者は冒頭の曲名の後に括弧書で記しておいたので参考にしてもらいたい。

 というわけで、私の知っているミュージシャンに限って、どの曲で演奏しているか、歌っているかを記すにとどめたいと思う。

 まず、著名なジャズ・ミュージシャンの曲をラテン音楽として演奏したライブ・アルバムを多数出しているトロンボーン奏者、コンラッド・ハーウィグ(Conrad Herwig)が参加している。全曲とおして演奏しているのはエディー・パルミエリくらいと書いたばかりだが、ライナーノーツをよく見てみると彼も全曲でトロンボーンを演奏していることが判った。エディーのお気に入りのミュージシャンのようである。

 ヴォーカルはエルマン・オリベイラ(Hermán Olivera)(1、2、4、6、8、)とウィチー・カマーチョ(Wichy Camacho)(3、5、7、9)の二人。このうちエルマン・オリベイラはブルーノート東京でのライブで、その歌声を何度か直接聴いている思い出深いヴォーカリストである。長身の彼は、マラカス(というのだろうか)を振りながら、のびのびとした声で歌う素晴しい歌手であった。自身の名義のアルバムも何枚か出している。

 「Oiga Mi Guaguanco」でトレス(Tres)でソロを弾いているのはネルソン・ゴンサーレス(Nelson González)だ。エルマン・オリベイラの「アディオス、ネルソン・ゴンサーレス」という声を聞き取ることができる。彼は「Café」でもトレスを弾いていると書かれているが、その演奏を聴き分けることはできなかった。「only background」と書かれているから、目立たないのであろう。この人の演奏もブルーノート東京で何度か聴いている。とても几帳面な感じの小柄な方である。

 最後の曲「Bug」ではBryan Lynchもトランペットで参加している。このアルバムの参加ミュージシャンについては、Discogsのページが詳しいので、興味のある方はご覧いただきたい。ただ、手元にあるライナーノーツと全てを比べたわけではないので、その正確性を保証することはできないのだが。

 このブログを書くために手に入れたライナーノーツと日本語訳歌詞をみていて気付いた。アルバムについてくるこれらのアイテムには、音楽をより深く楽しむためのヒントが隠されているということに。これまでの私は音楽さえ聴ければよいと思い、ライナーノーツはろくに見もせずに一瞥しただけでしまいこんでいた。しかし、音楽を聴きながら参加ミュージシャンを知り、歌詞を理解することで、今まで聞き流していた音楽の新しい楽しみ方に気付かされたのである。何ということだ。このアルバムに初めて出会ってからおそらく二十年以上の間、私はその機会を手に入れようとしてこなかったのである。

 ライナーノーツをみながら音楽を聴くと愉しいのだ。若かった頃は、アルバムを買うとライナーノーツをなめるように読んで、アルバムも繰り返し何度も聴いたものである。アルバムを買うという行為が特別のものではなくなってからは、真剣にアルバムと向き合うというような聴き方を忘れてしまっていたようである。単純に多忙であるためであったのかも知れないが。

 さて、このアルバムの中で特に秀逸なのは「Café」だ。この曲はエディーの古いアルバム「Echando Pa’lante (Straight Ahead)」でも聴くことができる。古い録音ではもっと遅いテンポで味のある演奏であった。が、このアルバムでは、より切れのあるリズムと演奏を聴くことができる。エディーのピアノもより情熱的である。この曲に限らず、このアルバム全体に打楽器のリズムが洪水のように溢れている。どの曲を聴いてもリズムに浸ることができる楽しいアルバムである。

 「Pas D’histoiries」は非常にテンポの良い曲。歌詞カードを見ると「俺の音楽に文句を付けないでくれ。ルンバを続けてくれ。」という意味らしい。歌手はウィチー・カマーチョ。「Malagueña Salerosa」はディー・パルミエリの曲ではないが、この曲で聴けるエディーのピアノソロも秀逸である。「El Dueño Monte」で聴けるウィチー・カマーチョの声も印象的だ。エディーのソロも素晴らしい。叫びながら弾いているのがわかる大変な熱演である。ともかく、全曲通してあっという間に聴き終えてしまう。

 「Oiga Mi Guaguanco」は、冒頭で聴ける十秒以上にわたる打楽器だけの演奏が珍しくて楽しい。打楽器だけの部分が終ったあとの曲ももちろん愉しい。これは、エディーから見ても先達のアルセニオ・ロドリゲス(Arsenio Rodríguez)の曲である。

 アルバムの最後を飾る曲「Bug」はジャズと言って良いだろう。ベーシストはジョン・ベニテス(john benitez)に代っている。 音を聞くとダブルベース(ウッドベース)のようだ。前述のとおりブライアン・リンチが演奏に加わっているから、当然彼がソロを吹きまくっているのかと思ったら、リンチは第一トランペットなのだが、ソロは第二トランペットのTony Lujanが演奏しているらしい。思い込みというのは怖いものである。ジャズのアルバムも出しているコンラッド・ハーウィグはソロを演奏している。

 長々と書いてしまったが、エディー・パルミエリを聞いたことがない方におすすめのアルバムである。素晴らしいよ。このアルバムは。

Os Ipanemas / Os Ipanemas

評価 :4.5/5。

1975年作品

  1. Consolação
  2. Nanã (Tema De Ganga Zumba)
  3. Se Chegou Assim
  4. Kenya
  5. Zulu’s
  6. Clouds (Nuvens)
  7. Adriana
  8. Garôta De Ipanema
  9. Jangal
  10. Berimbáu
  11. Congo
  12. Java

 Afro Bossaのレビューを書くために調べていて、このアルバムが安価に購入できる云ことに気付き、つい購入してしまった。以前調べたときは、結構高価で手が届かなかった記憶があるのだ。まだ、あまり聴きこんでいないのだが、感想を記しておくことにしたい。

 The Ipanemasとの違いであるが、古いライナーノーツには、ミュージシャンがきちんと書かれていない。楽器を演奏している写真の下にファーストネーム(と思われる字)が書かれているだけだ。それらの文字と写真から判断すると、Os Ipanemasは次のようなミュージシャンがメンバーだったと思われる。

  • Marinho:Bass(コントラバスを持っている)
  • Astor:Tronbone(トロンボーンを吹いている)
  • Wilson:Vocal and percussion(ブラジルの民族楽器ビリンバウ(Berimbáu)を持ってマイクの前にいる)
  • Néco:Guitar(クラシック・ギターを弾いている)
  • Rubens:Drums and percussion(ドラムスの前にすわってカウベルを叩いている)

 このアルバムを聴いて感じることは、ウィルソン・ダス・ネヴィス(Wilson das Neves)とネコ(Néco)の存在感が圧倒的だということだ。ライナーノーツを見ると、この二人は五分の二に過ぎないように見えるが、ネコのギターとウィルソンのビリンバウの音がこのグループのサウンドを決定づけているようだ。The Ipanemasを聴いている方なら、絶対に買った方が良いアルバムである。

 このアルバムでバーデン・パウエル(Baden Powell)の曲を2曲、アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)のイパネマの娘を収録している。バーデン・パウエルがボサノバかというと個人的に少し疑問もあるのだが、ネコはボサノバの影響を色濃く受けていると思っている。このころのネコのギターは、かなりボサノバ的だ。

 全体的にリズムが強調されている曲が多い中にあって、異色ともいえるのが「Clouds (Nuvens)」である。爽やかなギターの音色が聴いていて心地好い。後半に入るトロンボーンも曲を引き立たせてて良い。

 「Jangal」と「Berimbáu」ではビリンバウの音色を存分に楽しむことができる。これは、原始的な構造だが非常に魅力的な音色を出す楽器である。「Berimbáu」はバーデン・パウエルの曲だが、バーデン・パウエルのアルバムに収録されているこの曲では、この楽器の音を聴くことはできない。このブラジルの民族楽器をイメージして作曲した曲だということなのだろう。確かにこの曲のバーデン・パウエルのギターはビリンバウの演奏方法を模倣しているようだ。

 さて、入手が困難なアルバムだが、機会があれば手に入れてみたいアルバムである。

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